ビジネスチャット導入時に設定したい社内運用ルール12選
BLOG

  1. 記事作成代行のYOSCA
  2. ブログ
  3. メール・チャット
  4. ビジネスチャット導入時に設定したい社内運用ルール12選

ビジネスチャット導入時に設定したい社内運用ルール12選

最終更新日:2024年6月3日)

新型コロナの流行を機にリモートワークが広がるのと同時に、多くの企業が導入したビジネスチャットツール。メールよりも気軽にやり取りができるという特徴から、ビジネスコミュニケーションを円滑化させるツールとして活躍しています。

一方で、ビジネスチャットには「ただ導入しただけでは十分な効果は得られない」という一面もあります。弊社で行ったビジネスメール・チャットに関する実態調査では、約7割の人が「ビジネスチャットに関する社内ルールがない」と回答しています。ルール整備がされている企業は少数派であることがわかりました。

そこで今回は、ビジネスチャットを導入したばかり、または導入予定の人事担当者に向けて、ビジネスチャット運用におけるルール設定の重要性や、参考にしたい運用ルールについてご紹介します。当記事がビジネスチャットをより効果的に活用するための一助となれば幸いです。

◉本記事の著者
伊藤謙三
青山学院大学経済学部経済学科卒業後、フリーランス活動を経て株式会社YOSCAに入社。編集者としてさまざまなメディアの編集・ディレクションを担当する。講座や研修の開発・運営にも注力しており、2020年に「あなたのライターキャリア講座」、2024年に「文章のプロから学ぶ メール・チャットスキル集中研修」を立ち上げる。フリーライターの西東美智子氏と共に、ライター向けポッドキャスト「ライターのホンネ」を配信中。

ビジネスチャットにルールを設けるべき3つの理由

セキュリティ保護のため

ビジネスチャットは基本的にはセキュリティ強度は高く作られているので、そこまで神経質になる必要はありません。一方で、取引先や業務委託のメンバーなどがチャットに入っている場合、誤送信による情報漏洩が起きるリスクは存在します。また、不正アクセスなどの可能性もあります。パスワード設定や個々のチャンネルの活用目的についてルール化しておくことで、こうした問題の防止につながります。

社内に浸透させるため

ビジネスチャットはここ数年で普及してきた新しいツールのため、使ったことのない社員も多くいることでしょう。その状態でルールがないと使い方がわからず使うのが億劫になってしまい、せっかくツールを導入したのにあまり使われないという事態に陥ってしまうかもしれません。社員に積極的に活用してもらい、当たり前に使うものとして浸透させるためにはルール整備が必要です。

導入効果を最大化するため

同じテキストコミュニケーションツールといえども、メールとビジネスチャットには異なる点や機能も多くあります。ルールが整備されていないと、社員が慣れ親しんだメールと同じような使い方をし、導入効果が限定的になってしまう恐れがあります。ビジネスチャットの価値を最大限享受するためにも、メールとの違いを意識したルールを設定することをおすすめします。

参考にしたいビジネスチャット運用ルール12選

以下では、企業内で採用されることの多いビジネスチャット運用ルールを12個ご紹介します。なお、これらは「絶対に守らなければいけないルール」というわけではありませんので、自社の業務内容や雰囲気に合わせて適宜ご参考にしてください。

【1】チャットツールの責任者を決める

まずは、チャットツール運用における責任者を決めましょう。ビジネスチャットには、誰でも新しくチャンネルを作れる仕様になっているものが多くあります。しかしチャンネルを誰でも作れてしまうと、似たようなチャンネルが乱立し、それにより重要な情報が埋もれてしまったりどのチャンネルに投稿すべきか迷ったりしてしまうかもしれません。逆に、必要なチャンネルを誤って削除してしまうことも起こりえます。

こうした事態を防ぐためにも、責任者を決め、チャンネルの追加権限を責任者のみに付与しておくのがよいでしょう。もし管理者権限の設定ができない場合は「チャンネルの作成や削除は上司や人事の承認を得た場合のみとする」などのルールを決めて社内に周知することで、チャンネルの乱立を防ぎましょう。

【2】パスワード設定のルールを決める

ビジネスチャットのアカウントを作成する際、パスワードが数字のみやアルファベットのみかつ短いなどの単純なものだと、外部からの不正アクセスリスクが高まります。また、会社名や社員番号なども見破られやすいです。こうした外部の人が想定しやすい文言はパスワードに入れないよう、ガイドラインを定めておくことがおすすめです。

Googleなどが複雑なパスワードを提案して、かつ記憶しておいてくれる機能もあるため、「パスワード生成機能を使ってパスワードを作る」といったルールを定めておくのも一手です。業務で頻繁にビジネスチャットを使う場合は特に、情報漏洩した場合のダメージも大きくなってしまいます。セキュリティにも注意をした上で、ルールを設定しましょう。

【3】送信可能な時間帯を決める

主要なビジネスチャットツールにはスマートフォンアプリも用意されているため、PCの前にいない時でも気軽に連絡を取ることができます。これは長所ではありますが、一方で休日や夜間にも連絡が来て心が休まらないといった問題の要因にもなり得ます。

社員のワークライフバランスを損なわないためにも、「業務時間外や休日には、どうしても今しないといけない緊急連絡以外は禁止する」などのルールを決めておくことをおすすめします。特に雑談用のチャンネルなどは、仕事の内容ではないからとつい送ってしまいやすいので、注意が必要です。

チャットツールには予約送信機能がついているものもあります。予約送信ができる場合は「業務時間外は予約送信での送信を行う」とのルールを設定するのもよいでしょう。

【4】メールとの使い分けを明確にする

ビジネスチャットツールはメールと違うところも多いとはいえ、大別するとメールと同じテキストコミュニケーションツールです。テキストコミュニケーションのためのツールが複数あることで、どれを使うべきなのか迷う社員も出てくるかもしれません。また、人によってメールとビジネスチャットの使い分け方が異なると、後からやり取りを見返すときにもどちらを見ればいいかわからず、ビジネスチャットにより逆に効率が悪くなってしまう可能性もあります。メールとの使い分けを明確にすることで、これらの問題を防ぎましょう。

具体的な使い分けとしては、「社内で完結する業務のやり取りはすべてチャットで行う」、「業務日報などの体系だった報告はメールで行うが、業務上の細かなやり取りはチャットで行う」などが挙げられます。

また併せて、DMと通常のチャットルームの使い分けも明文化しておくとよいでしょう。チャットツールに慣れていない人が多い職場の場合は特に、DMばかりが使われてしまい、組織全体でのコミュニケーション促進につながらない可能性があります。社員が社内の状況を把握しやすくするためにも、基本的にはオープンな場での投稿とすることと決めておくのがおすすめです。DMを使うのは全体に公開するべきでない機密性の高い情報をやり取りする場合や、プライベートな内容などのみとしておくのがよいでしょう。

【5】投稿してはいけない内容を決める

ビジネスチャットツールは気軽なツールである分、普段はビジネスシーンでしないような不用意な発言をしてしまうリスクが高いです。社内のコミュニケーションを円滑かつ健全なものとするべく、投稿を禁止する内容のガイドラインも作っておきましょう。禁止を推奨する発言としては「社内外にかかわらず、他者を攻撃・揶揄する発言」「他者のプライベートに関わる話」「過度にネガティブな発言」などがあります。

【6】チャンネルの目的を明確化する

どのチャンネルで何を投稿すべきなのかを明確にしておけば、社員も投稿しやすくなりますし、間違ったチャンネルに投稿してしまうなどの混乱の防止にもつながります。また「業務用」「雑談用」などとザックリした区分けではなく、「中途の営業職採用について」、「挨拶専用」、「ランチ情報」など、より細分化してチャンネルを作っていくと、社員も使いやすくなります。

特に雑談用のチャンネルはただ雑談としても「雑談と言われても何を話せばいいかわからない」と社員が思ってしまい、コミュニケーションが活性化しないケースもままあります。雑談のなかでもいくつかテーマを決めて複数のチャンネルを用意しておくことで、より社員が発言しやすい環境を作ることにつながるでしょう。

【7】ユーザー名やチャンネル名の規則を設定する

ビジネスチャットの一部では、送信内容を伝えたい相手に対してメンションをつけることができます。「@ユーザー名」と入力しメンションを行うのですが、ユーザー名が人によりまちまちだと、入力が煩雑になってしまいます。たとえば「田中さんにメンションを飛ばしたい」と思ったときに「@田中」「@Tanaka」「@たなか」のどれで入力すればいいのかわからず、メンションをつけるまでに時間がかかってしまうのです。一回一回は些細な時間ですが、積み重ねれば膨大な時間となるかもしれません。

こうした無駄な工数を削減するべく、ユーザー名の命名規則を決めておくと便利です。命名規則としておすすめなのが、@を入力した後にそのまま打ち込みやすいローマ字表記です。「フルネームをローマ字表記で登録すること」と定めておくことで、より効率的にビジネスチャットを利用できるでしょう。

また、チャンネル名に対しても同様です。多くのチャンネルが存在する場合は、特にできるだけシンプルで検索しやすいチャンネル名となっていることが重要。「プロジェクト名にする」「チャンネルの話題を名前にする」などのルールを作り、チャンネルを作る権限を持つ人に展開しておくと、より便利にビジネスチャットを使えます。

【8】絵文字などを用意する

チャットツールに欠かせないのが、絵文字やスタンプでのリアクション機能です。オリジナルの絵文字を登録できるツールもあり、自社の行動指針に関わる絵文字やメンバーの愛称などを登録している企業も多いです。また、「よろしくお願いします」「ありがとうございます」「確認しました」などのよく使う文言を絵文字化しているケースもよく見られます。これによりコミュニケーションが効率的になるのはもちろん、「よろしくお願いします」などの発言する意味はあるが内容はあまりないやり取りでチャットルームが溢れることがなくなり、やりとりした内容の振り返りもしやすくなるという効果もあります。

そのため、オリジナル絵文字を登録できる場合は絵文字を登録し、言葉ではなく絵文字でリアクションすることをルールとするのがおすすめです。ツール規定の絵文字しか使えない場合も、「お礼は絵文字Aで、了解の意は絵文字Bでリアクションする」などのルールを整備すれば、よりミニマルなやり取りを実現できます。

【9】メンションの基準を決める

先述の通り、ビジネスチャットには宛先を示すメンションという機能が存在します。ツールにより方法は異なりますが、全員に発信したい場合は、全員に対してメンションを送ることも可能です。しかし、あまり頻繁に全員に対してメンションをつけると、通知が増えてしまい業務の邪魔となるだけでなく、重要な情報が埋もれてしまうかもしれません。これらの問題を防止するために、「全員が必ず知るべき情報は全体メンション」「重要度が低い情報は全体メンションをせず、本当に伝えたい人にだけメンションを飛ばす」などのルールを設定しておきましょう。

また、直接的な宛先ではないものの、メッセージの内容を知っておいてほしい人には、文中にCCと記載した上でメンションを飛ばすこともできます。チャットツールに搭載された機能ではないので、通知等は通常のメンションと同じですが、伝えてはおきたいが重要度は高くないことを知らせるという意味ではいい手法だと言えます。こうしたCCの使い方も含めて、メンションの基準を設定していくとよいでしょう。

【10】スレッド機能を使う

​​ビジネスチャットツールは、メールとは違って多くの人が同じ画面上でやり取りをすることとなります。複数の会話が同じチャットルームで行われている場合に、会話が混在しないために、スレッド機能が用意されているツールもあります。これは、1つの投稿に返信する形で会話ができ、同じトピックに関する発言をひとつの場所にまとめることができる機能です。

複数の会話が発生する可能性もあるチャットルームでは、スレッド機能がある場合は、必ずスレッド上で返信することをルール化しましょう。そうしなければ、会話を遡るのが煩雑になってしまい、業務効率が下がってしまうかもしれません。スレッド機能のないビジネスチャットツールを使っている場合は、できるだけ会話が混在しないよう、より細分化してチャットルームを作るのも一手です。

【11】メッセージへ応答するまでの推奨時間を設定する

ビジネスチャットでは、応答までの時間にも注意が必要です。ビジネスチャットツールはメールに比べて、迅速なやり取りが好まれるツールです。メールの場合、返信が1営業日後となることは珍しくありませんが、チャットツールの場合は1日反応がないと、多くの人が「遅いな」と感じるでしょう。絵文字でのリアクションでも問題ないので、できるだけ1営業日以内に応答するのが好ましいとされます。

こうした感覚はビジネスチャットを使ったことのない人にはわかりにくいですが、本人に悪気がなくとも、返信が遅いと相手の気分を損ねてしまう可能性があります。コミュニケーションを円滑にするためにも、ルールとして応答までの推奨時間を設定することがおすすめです。

【12】チャットが長文化しないための対策を設定する

気軽なやり取りや、素早いレスポンスが求められるビジネスチャットツールでは、長文は好ましくありません。読むのが億劫になったり返信のハードルが上がったりするのはもちろんですが、長文が続くとやり取りを遡るために膨大なスクロールが必要になってしまいます。

もし伝えるべき情報量が多く、どうしても長くなりそうな場合は、使っているチャットツールにスレッド機能があるのであれば「〇〇の件について」と書いて、スレッドにて詳細を記載すると、その件に関係のない人にとっての負担を軽減できます。スレッド機能がない場合は、ワードファイルや別のツールにまとめて、それを共有するのも一手でしょう。こうしたビジネスチャットの長文化を防止するルールを設定することで、社員にとってより快適なビジネスチャット環境の整備につながります。

まとめ 

今回は、ビジネスチャットの運用ルールを紹介しました。ビジネスチャットを安全に、かつ最大限活用するためには、ルール設定が欠かせません。ただ導入するのではなく、ルールを作った上で導入しましょう。加えて、適切なルールを設定したとしても、ルールだけで完璧に活用できるわけではありません。ビジネスチャットがうまく機能するために何よりも重要なのは、社員のテキストコミュニケーションスキルです。

YOSCAでは、ビジネスメール・チャットの書き方を体系的に学べる企業向け研修「ビジネスメール・チャット添削研修」を提供しています。部署内のテキストコミュニケーションや、リモートワーク下での意思疎通に課題を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆協力:えなりかんな

The following two tabs change content below.
伊藤謙三
1989年、神奈川県生まれ。青山学院大学経済学部経済学科卒業。 大学卒業後に株式会社YOSCAに入社し、編集者としてメディアの編集ディレクション・ライターの育成に携わる。これまでに500人以上の駆け出しライターに対して文章の添削指導をした実績を持つ。 現在は文章添削の専門家として、文章にまつわる講座や研修の開発に着手。2020年に「あなたのライターキャリア講座」、2024年に「ビジネスメール・チャット添削研修」を立ち上げる。 フリーライターの西東美智子氏と共に、ライター向けポッドキャスト「ライターのホンネ」を配信中。