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導入事例が営業で使われない本当の理由|商談を動かす事例活用と設計の見直し方

最終更新日:2026年8月26日)

この記事の要点


Q: 導入事例を作ったのに営業が使ってくれないのはなぜですか

A: 事例が読ませる設計で作られているのに、商談では一息で言い切れる一文が求められているためです。本数を増やしても解決しません。

Q: 使われない事例に共通する特徴はありますか

A: 導入前の状態が書かれていない、主語が自社サービスになっている、誰がどう決めたのかが書かれていない、の3つが代表的です。

Q: 何から手をつければよいですか

A: 取材の前に営業へ15分ヒアリングし、記事と営業用の要約スライドを同じ設計図のうえで作ることから始めてください。

導入事例を3本作りました。自社サイトにも公開しました。SNSでも告知しました。ところが半年後、営業の提案書をのぞいてみると、そこに事例は入っていません。

このとき多くの企業が「本数が足りないのだろう」と考えます。そして4本目の制作に着手します。

けれども本数を増やしても、状況はほとんど変わりません。5本目でも、10本目でも同じです。営業が事例を使わないのは、事例の存在を知らないからでも、種類が足りないからでもありません。

原因はもっと手前、その事例がどういう使われ方を想定して作られたかにあります。そしてこのズレは、できあがった記事を読み返しているだけでは見つかりません。

◉本記事の著者
宮嵜幸志
編集プロダクションYOSCA代表 兼 星天出版編集者。10年以上に渡りライティング学習について研究。自らも執筆する傍ら、60冊以上のライティング本による学習から、「ライター」「編集」と名がつくセミナーやライター講座・スクールを30以上受講し、ライティングスキルの研鑽を積む。ライティングセミナーの講師としても活動。『入門 SEOに効くWebライティング サイトの価値を高める正しいコンテンツの作り方(出版社:SBクリエイティブ)』 を上梓。 ▶X(Twitter)

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YOSCAは、企画設計から取材・執筆・営業向けの要約まで、導入事例制作を一括でご支援しています。商談で使われる状態を前提に設計するので、作っただけで終わりません。

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目次

導入事例が営業で使われないのは本数の問題ではない

BtoB SaaS・IT企業のマーケティング担当者と営業企画担当者に、自社で制作した導入事例について感じている課題をたずねました。最も多かった回答は「営業が商談で活用してくれない」で、約64%にのぼりました。制作の工数や取材許諾といった、いわゆる作る側の悩みを上回っています。

制作した導入事例について感じている課題(複数回答)

▸ 営業が商談で活用してくれない

約64%

▸ 商談・受注への貢献が測れない

約52%

▸ どんな事例を作ればよいか分からない

約44%

▸ 掲載を許諾してもらえる企業が限られる

約32%

▸ 制作の工数が確保できない

約20%

YOSCAによる独自調査(2026年実施・BtoB SaaS/IT企業のマーケティング・営業企画担当者75名)

この結果で見落とせないのは、2位の「商談・受注への貢献が測れない」が約52%だったことです。1位と2位は別々の悩みのように見えますが、根は同じところにあります。使われていないものは、当然ながら効果も測れません。貢献が見えないのは測定手法が未整備だからではなく、そもそも測る対象が動いていないためです。

では、なぜ使われないのでしょうか。営業に直接たずねると、返ってくる答えはたいてい似ています。内容は悪くない、ただ商談で出す場面がない、というものです。

悪くない記事なのに、出す場面がない。営業が口にするこの一見矛盾した言い方に、問題の正体が隠れています。

営業が商談で使うのは記事ではなく一文

商談のなかで事例に触れる時間は、長くても1分ほどです。相手の関心が別のところにあれば、20秒足らずで切り上げることもあります。

その限られた時間で営業が口にするのは、記事の要約ではありません。「御社と同じ規模の製造業さんで、月末の締め処理が5営業日から2営業日に短くなった例があります」といった、一息で言い切れる一文です。この一文が相手に刺されば、そこで初めて「詳しい資料はありますか」という反応が返ってきます。

つまり事例記事は、商談の入口ではありません。入口はあくまで営業の口から出る一文であり、記事はその一文が刺さった後に渡す裏づけです。この順番を取り違えた事例が、使われない事例になります。

営業が引用できる粒度になっているか

読みものとしてよくできた事例ほど、この一文が抜き出せない構造になっていることがあります。導入の背景から検討の経緯、導入後の変化までが流れるように書かれていて、どこを切っても文脈が必要になるからです。

営業が求めているのは、文脈なしで単体で成立する短い事実です。会社の規模、業種、導入前に困っていたこと、導入後に変わったこと。この4点が並んで初めて、商談の会話に持ち込めます。記事のどこかにその4点が散らばっているだけでは、営業は毎回2000字を読み直して抜き出す作業を強いられます。商談準備に使える時間を考えれば、その工程が省かれるのは当然の帰結です。

数値のない事例は会話に乗らない

「業務が効率化しました」「社内の風通しがよくなりました」。取材ではよく出てくる言葉です。しかし数値を伴わない変化は、商談の場でほとんど機能しません。相手にとって、それは自社に置き換えて考えようのない感想だからです。

数値が出ない理由は、たいてい取材の設計にあります。導入前の状態を計測していない企業に、導入後の改善幅をたずねても答えようがありません。数字は取材相手が用意しているものを受け取るというより、聞き方を工夫して引き出すものです。ここを取材相手任せにしているかぎり、成果の欄はいつまでも埋まりません。

使われない事例に共通する3つの設計ミス

これまで数多くの導入事例を制作してきたなかで、公開後に使われなくなる事例には共通した型があると分かってきました。文章の巧拙ではなく、取材前の設計段階で決まってしまう部分です。

導入前の状態が書かれていない

最も多いのがこれです。導入後にどう良くなったかは詳しく書かれているのに、導入前に何がどう困っていたかが1行で片づけられている事例です。

読み手である見込み客は、いま導入前の状態にいます。自分と同じ場所にいた企業がどう動いたかを知りたいのであって、たどり着いた先の風景だけを見せられても距離が測れません。導入前の描写が薄い事例は、成功の自慢話に見えてしまいます。

目安として、導入前の記述が記事全体の3割を切っていたら書き足しを検討してください。困っていた状態が具体的であるほど、事例は共感を生みます。

主語が自社サービスになっている

「本製品の自動連携機能により、データ入力の手間が削減されました」。こうした書き方をしている事例は、機能紹介ページと役割が重なってしまいます。

事例の主語は、導入した企業とそこで働く人であるべきです。誰が、どんな判断をして、どう働き方が変わったのか。サービスはその物語の登場人物のひとつにすぎません。主語がサービスに寄った事例は、営業からすると「製品資料で説明したほうが早い」ものになり、出番を失います。

誰がどう決めたのかが書かれていない

BtoBの購買は、担当者ひとりでは決まりません。現場が使いたいと言い、情報システム部門が安全性を確認し、経営層が予算を承認するという、三者の合意が要ります。

ところが多くの事例は、現場担当者の声だけで完結しています。稟議をどう通したのか、上長からどんな指摘が出て、それにどう答えたのか。この部分こそ、いま社内を説得しようとしている見込み客が最も知りたい情報です。ここが空白の事例は、検討の最終盤で役に立ちません。

3つの設計ミスは、いずれも取材の場で決まります。書き手の力量ではどうにもならない部分だからこそ、質問の設計が効いてきます。

取材で使える材料を引き出す質問の組み立て方

取材の時間は、たいてい60分から90分です。この限られた時間で、記事に必要な材料と営業に必要な材料の両方を揃えなければなりません。用意した質問をそのまま順に投げていくと、当たり障りのない回答が並んで終わります。

導入前の困りごとは時間軸で聞く

「導入前はどんな課題がありましたか」という質問には、たいてい「業務が非効率でした」という抽象的な答えが返ってきます。これは相手が不親切なのではなく、質問が抽象的だからです。

聞き方を時間軸に置き換えると、返ってくる内容が一変します。導入を検討しはじめた月に何が起きていたのか。その前の四半期に、どんな失敗やトラブルがあったのか。具体的な時期を手がかりにすると、相手の記憶が呼び戻され、場面の描写が出てきます。読み手が自分の状況と重ねられるのは、この場面の描写のほうです。

数字は相手が答えられる単位まで降ろす

削減率や工数削減時間をいきなり聞いても、正確な数字を持っている企業は多くありません。答えられない質問が続くと、それ以上具体的な言葉が出てこなくなります。

そこで段階を下げていきます。何パーセント減ったかが分からなければ、以前は何人で回していたかを聞きます。それも曖昧なら、月末の締め作業が何日かかっていたかを聞きます。日数や人数は、感覚でも答えやすい単位です。ここまで降ろせば、あとは記事のなかで計算の根拠を添えて示せます。

社内の反対意見を聞く

取材で意外なほど話してもらえるのが、社内で出た反対意見です。費用が高いと言われた、いまのやり方で困っていないと言われた、現場が覚えられないと言われた。こうした声は、どの企業の検討過程にも存在します。

そしてこれは、いま検討中の見込み客が社内で直面している声とほぼ重なります。反対意見と、それにどう答えたかがセットで書かれている事例は、稟議の場面でそのまま台本になります。取材の終盤、打ち解けたころに「導入を決めるまでに、社内から反対はありませんでしたか」と聞いてみてください。多くの場合、そこから記事の山場になる話が出てきます。

事例が商談を動かす場面は3つに分かれる

同じ調査で、営業担当者からどんな切り口の事例を求められることが多いかもたずねました。最も多かったのは「自社と同じ業界・業種の事例」で約68%、次いで「他社製品からの乗り換え理由が分かる事例」が約56%という結果でした。

営業担当者から要望が多い事例の切り口(複数回答)

▸ 自社と同じ業界・業種の事例

約68%

▸ 他社製品からの乗り換え理由が分かる事例

約56%

▸ 投資対効果を数値で示した事例

約40%

▸ 導入の社内稟議の通し方が分かる事例

約28%

▸ 導入後の運用体制が分かる事例

約16%

YOSCAによる独自調査(2026年実施・BtoB SaaS/IT企業のマーケティング・営業企画担当者75名)

興味深いのは、上位に並んだ切り口が互いに競合していない点です。これらは優先順位ではなく、商談の進行段階に対応しています。同じ商談のなかでも、初回と最終盤では求められる事例がまったく違います。

初回商談では業界の近さが効く

初回の商談で相手が知りたいのは、この会社は自分たちのことを分かっているか、という一点です。約68%の担当者が同業種の事例を求められると答えたのは、この段階での需要が最も大きいためです。

ここで効くのは、成果の大きさよりも状況の近さです。同業種というだけでなく、従業員規模や拠点数、既存システムの構成が近いほど、相手は自分ごととして聞きはじめます。事例の一覧ページを業種で絞り込めるようにするだけで、営業の使い勝手はかなり改善します。

比較検討では乗り換えの理由が効く

複数社を比べている段階に入ると、相手の関心は「なぜ他社ではなくこれを選んだのか」に移ります。約56%という数字は、この局面で営業が手札を欠いていることを示しています。

乗り換えを扱う事例は、取材の難易度が上がります。前に使っていた製品の名前は出せませんし、否定的な表現も避ける必要があります。それでも「何が決め手になったか」は書けます。機能の差なのか、サポート体制なのか、費用構造なのか。選定の理由を具体的に語ってもらうことが、この種の事例の価値になります。

稟議では社内を説得する材料が効く

最終盤で相手が向き合っているのは、こちらの営業ではなく自社の上長です。担当者は社内の会議で説明する立場に立たされます。

この段階で渡すべきなのは、投資対効果の数値と、他社が稟議をどう通したかの記録です。要望として挙がったのは約40%約28%にとどまりました。割合が小さく見えるのは、稟議まで進む商談の数が初回商談より少ないためです。受注の直前で失注が続いているなら、真っ先に補うべき領域がここになります。

制作の段階で使われる状態まで設計する

ここまで見てくると、活用の問題を公開後に解決しようとするのが難しいことが分かります。取材で聞いていないことは、あとから書き足せません。

取材前に営業へ3つの質問をする

事例の企画を立てる前に、営業チームへ確認しておきたいことが3つあります。直近の商談でどんな業種の話が多かったか。競合と比べられたとき、どこで負けることが多いか。そして、いま欲しい事例を1本だけ挙げるとしたら何か。

この3問に15分もらえれば、企画の精度は大きく変わります。マーケティング側が良さそうだと思う事例と、営業が明日使いたい事例は、驚くほどずれていることがあります。制作を始めてからではなく、始める前にすり合わせておくのが要点です。

1本の事例を3つの形に分けて納品する

取材が1回でも、成果物を1つに限る必要はありません。同じ取材から、用途の違う3つの形を作れます。

1つ目は、サイトに掲載する読みものとしての記事です。2つ目は、営業が提案書に貼り込めるスライド1枚の要約で、企業概要と導入前後の変化を図で示したものになります。3つ目は、商談中に口頭で伝えるキーフレーズです。文量はわずか数行ですが、営業への浸透度を最も左右するのはこの3つ目になります。

3つをまとめて設計しておく理由は単純で、取材が終わってから作ろうとすると必要な素材が足りないことに気づくためです。スライド用の図を作る段になって、比較できる数字を聞いていなかったと分かるのは珍しくありません。

使われたかどうかを測る簡単な方法

効果測定というと、商談化率や受注貢献額といった指標を思い浮かべがちです。しかし最初の一歩としては、もっと粗い測り方で十分です。

提案書のテンプレートに事例スライドの枠を用意し、月に何件の提案書でその枠が埋まったかを数えます。あるいは営業へ月1回、直近で事例を出した商談があったかをたずねます。この程度の粗さでも、使われているかどうかは判別できます。精緻な指標を設計する前に、まず動いているかを確かめることが先です。

本数を増やす前に既存の事例を棚卸しする

すでに何本か公開している企業であれば、次の制作に取りかかる前にやることがあります。手元の事例を、業種、企業規模、解決した課題、数値成果の有無という4つの軸で並べてみてください。

すると、たいてい偏りが見えます。特定の業種に集中している、あるいは数値成果のある事例が1本もない、といった具合です。営業がよく当たる業種の欄が空白なら、そこを埋める1本が10本の追加より効きます。

棚卸しの過程で、書き足しで蘇る事例が見つかることもあります。導入前の状況が薄いだけなら、担当者に追加で15分ヒアリングして補強すれば、十分に使える1本になります。新規に取材を組むより、はるかに短い時間で成果が出ます。過去記事の見直しについてはオウンドメディアのリライト判断と優先順位の付け方もあわせてご覧ください。

まとめ

導入事例が営業で使われないのは、事例が悪いからではありません。読ませるために作られたものを、語らせる場面で使おうとしているからです。設計されている用途と、期待されている用途が最初からずれています。

やることは単純です。取材の前に営業へ用途を聞き、記事と営業用の要約を同じ設計図のうえで作ります。

それでも多くの企業がこの手順を飛ばしてしまうのは、事例制作がマーケティング部門の業務として切り出されているためです。制作の責任は自部門にあり、活用の責任は営業にあるという分担が成立しているかぎり、誰も設計のズレに気づけません。事例が使われない問題は、コンテンツの問題である前に部門間の設計の問題です。

まずは次の企画会議の前に、営業へ15分だけ時間をもらってください。商談の現場でいま欠けているのはどの一枚か。その答えを持って企画に入れば、次の1本は最初から使われる前提で設計できます。制作の体制づくりから相談したい場合は、BtoB SaaS・IT企業向けの導入事例制作のページもご参考になさってください。

導入事例の活用におけるよくある質問

Q.導入事例は何本くらい用意すればよいですか

A. 本数よりも組み合わせで考えることをおすすめします。営業がよく当たる業種を上位3つ挙げ、それぞれ1本ずつ、加えて数値成果が明確な1本があれば、初回商談から比較検討までは一通りカバーできます。4本から5本を目安に、偏りが出た領域を足していく形が現実的です。

Q.掲載先の企業から実名の許可が下りない場合はどうすればよいですか

A. 匿名でも事例は成立します。業種と従業員規模、拠点数を出せれば、読み手は自社との距離を測れます。実名が出せない代わりに、数値や社内の検討過程をより詳しく書かせてもらう交渉が有効です。実名NGの状況で事例を増やす方法は導入事例に協力してもらえない本当の理由で詳しく扱っています。

Q.営業に事例を使ってもらうには何から始めればよいですか

A. 提案書のテンプレートに事例スライドの枠をあらかじめ作っておく方法が、最も摩擦が少なく効果的です。営業が自分で探して貼り込む手間をなくすと、利用率が上がります。あわせて、商談で使える一文の例を事例ごとに添えておくとさらに定着します。

Q.導入事例の制作を外注する場合、どこまで任せられますか

A. 企画設計、取材先への依頼文の作成、取材同席、執筆、掲載確認までを一括で任せられる制作会社もあります。YOSCAでは営業向けの要約スライドや商談用の一文まで含めた設計を承っています。費用の目安については導入事例制作の外注費用相場をご覧ください。

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宮嵜 幸志
編集者 / YOSCA代表 ライタープロデューサーとして試行錯誤中です。 Udemy講師として『1秒1文字!悩まず書ける ノンストップライティング 』、『現役プロライター・編集者に学ぶ 取材・インタビューの実践テクニック100分速習コース』を提供。
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