結果につながる顧客事例の書き方・作り方|企画からインタビュー、記事執筆まで徹底解説
( 最終更新日:2024年11月29日)
BtoB企業において、顧客事例は重要なコンテンツのひとつです。比較検討段階にある企業をクロージングしたり、営業ツールとして活用したりと、その用途はさまざま。自社で制作できる強力な集客コンテンツとして、多くの企業が力を入れて増産を図っています。
とはいえ、ただ事例をたくさん作って掲載すればOK……というわけではありません。より効果的な事例を作るためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があるでしょう。
本記事では顧客事例の作り方について、企画からインタビュー、そして記事執筆の方法まで網羅的に解説します。「初めて顧客事例を作る」あるいは「すでに顧客事例があるが、なんだかイマイチで改善したい」と感じている企業のご担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
顧客事例とは
顧客事例の役割
顧客事例とは、自社の商品・サービスを導入した顧客に対してインタビューを行い、その内容をインタビュー記事としてまとめたものを指します。商品・サービス導入によって得られた定性・定量的な成果や、利用後の感想をアピールするのが大きな目的です。
顧客事例の効果
顧客事例はBtoBでもBtoCでもキラーコンテンツになり得ますが、特にBtoBにおいては以下のような効果が見込めます。
- 商品・サービスを魅力的に見せる
- 他社商品との比較検討を促す
- 企業の信頼感を醸成する
- 検討中の見込み客のクロージング材料にする
- 社内の稟議における説得材料にしてもらう
顧客事例の最大の特徴は、実際の利用者の声を掲載できること。ホームページやカタログで概要を見るだけでは知り得ないような導入・利用時の具体的な情報を伝えることで、新規顧客の商品・サービス導入の後押しになります。
特にBtoBサービスの場合は「ちょっと試しに買ってみよう」といったトライアルができないケースが多いため、顧客事例から得られる情報はかなり重要視されるでしょう。
顧客事例の活用方法
顧客事例というと、自社サイトのコンテンツのひとつとして掲載するイメージが強いかもしれません。実は、記事化された事例の活用方法はWeb掲載だけではないのです。
- メルマガで紹介
- 営業ツールへ転用
- ウェビナー等の動画コンテンツへ展開
- 採用、研修時のツールとして活用
- 一部を切り取ってSNSで発信
マーケティングや営業、あるいは採用・人事の分野にいたるまで、幅広く活用できます。このような特徴も、顧客事例が「キラーコンテンツ」と呼ばれる理由のひとつです。
顧客事例の実用例
顧客事例は、企業によって見せ方にさまざまな工夫がなされています。
例えば、マーケティング支援企業であるテクノポート株式会社の事例紹介ページは、案件ごとに支援内容が大きく異なるため、トップ画面で「支援内容」と「ご利用いただいたサービス」がひと目で分かるようになっています。利用は製造業に限定されていることから、閲覧者が同業他社の動向が分かるよう、企業名も大きく出しているのが特徴です。
一方、株式会社マネーフォワードの主要サービス「Money Forwardクラウド」の事例紹介ページは、幅広い業界に利用されているサービスであるため、トップ画面で業種や事業規模を見て事例を選べるようになっています。
オンライン名刺サービスを提供しているSansan株式会社の事例紹介ページも、業種や事業規模で検索できるようにしているほか、事例記事の一部には動画も掲載してリッチなコンテンツに仕上がっています。
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顧客事例作りの5つの工程
顧客事例の基本を押さえたところで、続いては顧客事例の具体的な作り方について解説します。顧客事例の制作は、以下の5つの工程に分けられます。
- 自社の強みの分析
- 企画の考案
- インタビューの準備
- インタビューの実践
- 記事執筆
一般的には「企画」「インタビューの準備」「インタビューの実践」「記事執筆」の4工程ですが、弊社の場合は最初に「自社の強みの分析」という工程を入れるようにしています。
それでは、各工程について詳しく見ていきましょう。
【1】自社の強みの分析
なによりも先に、まずは自社の強みの分析から入ることをおすすめします。というのも、インタビューする相手に語ってもらいたいのは、ただの成果や感想ではありません。「なぜ自社の商品・サービスでなければいけなかったのか」という必然性です。
そのためには、会社として打ち出したいセールスポイント、すなわち自社の強みや他社優位性を自覚しておく必要があります。この部分をしっかり押さえながら記事を執筆すれば、より効果の高い顧客事例になるでしょう。
自社の強みを分析する際は、以下のようなフレームワークが役立ちます。
4C分析
「顧客にとっての価値」「顧客が負担する費用」「顧客にとっての利便性」「顧客との対話」の4要素を顧客視点で考える手法です。自社の特徴を多角的に洗い出し、その中から顧客事例で打ち出したいセールスポイントを見つけます。
SWOT分析
「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4要素から自社の特質・競争優位性などを分析する手法です。内部要因(自社の努力でコントロールできる要素)と外部要因(自社の努力ではコントロールできない要素)を切り分けて考え、業界の風潮や社会情勢なども考慮したうえで、いまアピールすべき自社の強みを探します。
【2】企画の考案
アピールしたい自社の強みが定まったら、続いては実際にコンテンツの企画を行います。
目的の設定
まずは、顧客事例記事を作る目的を明確に定めるようにしましょう。ここで決めておきたい内容は以下の3つです。
- ターゲット
- 掲載形態
- 求める結果
ターゲットは基本的にすべての顧客ではありますが、顧客事例の場合はその中でも「すでに自社のサービスを知っている・あるいは検討段階にある顧客層」と考えられます。さらに具体的な業種や職種、企業規模、役職など、できるだけ詳細なペルソナ(典型的なユーザー像)を想定しましょう。
掲載形態については、実際に記事を公開する媒体や、想定文字数などを含めた記事の体裁を決めていきます。求める結果については、PV(ページビュー)やCVR(コンバージョン率)など、具体的な目標数値を設定しましょう。
誰に、なにを、どのように届けたいのか。どのような目的を達成したいのか――。顧客事例の制作は手間暇がかかる上に複数の記事を作ることになりますので、つい「事例記事を作ること」そのものが目的になってしまいがちです。最初の段階でしっかりと目的を定めておきましょう。
対象企業の選定
目的が決まったら、実際にインタビューを行う企業を選定します。企業選定によって導入事例の質が決まると言っても過言ではありませんので、大きくは以下のような視点で慎重に行います。
- ターゲット像にマッチしているか
- 自社が分析した強みを気に入って導入してもらっているか
- ターゲット企業の同業他社か
- 知名度はあるか
- 属性(規模、業種、所在地)は適切か
導入事例で達成したい目的によっても選定基準は若干変わります。目的と照らしあわせながら適切かどうかを判断しましょう。属性も、商品・サービスの性質によっては統一したりバラけさせたりします。
また、もし自分がマーケティング担当者なら、遅くともこの段階で営業と連携して情報共有を行いましょう。顧客企業のことを一番よく知っているのは基本的に営業担当者ですので、どのような企業が事例に適しているのかを見極めやすくなります。
【3】インタビューの準備
企画が固まり、対象企業の選定も完了したら、いよいよインタビューの準備開始です。対象企業にアポ取りをして、当日のセッティングを行います。
取材申し込み・アポ取り
対象企業に取材を申し込む際は、顧客事例の企画概要を簡単に文章でまとめた上で打診・アポ取りをします。3,000~4,000文字程度の記事であれば、取材のみなら1時間程度、撮影を含めると2時間程度が取材時間の目安となります。当日の想定スケジュールも簡単に伝えておきましょう。
インタビューは取材先企業で行うのが一般的ですので、インタビュー会場として利用可能かどうかを聞きます。もしNGが出た場合は自社に来てもらうか、あるいは別途貸し会議室などを手配しましょう。
取材申し込み時のポイントは、顧客事例制作の目的とともに「なぜ(他でもなく)貴社にインタビューがしたいのか」という点を書き添えておくことです。また、記事制作を通じて取材先企業のPRやメディア露出につなげられる余地があるのであれば、インタビューにご協力いただくことのメリットとしてしっかり提示すると受け入れられやすくなります。
なお「記事の執筆だけをライターに外注する」「カメラマンを入れて撮影も行う」などといった場合は、取材先を含めて3~4者間でのやりとりが必要になりますので、すれ違いが起きないよう日程や時間調整は綿密に行いましょう。
質問票の作成
アポ取りや会場のセッティングができたら、事前に質問票を作成して先方に共有しておくと進行がスムーズになります。顧客事例における質問内容は、記事形態や商品・サービスの特性・取材先企業によって多少異なることもありますが、概ね以下のような内容をヒアリングするとよいでしょう。
- 解決したかった課題
- 商品・サービスにまつわる分野でどのような課題を抱えていたか?
- 課題解決のためにどのような取り組みをしていたか?
- 他社と比較した際のメリット、導入の決め手
- 商品・サービスを知ったきっかけは?
- 他社と比べていいと感じた点は?
- 導入の決め手になった点は?
- 導入プロセス
- 導入時に苦労したことや導入の障壁になったものは?
- 導入時のサポートでよかった点は?
- 定性的・定量的な成果
- 商品・サービスを導入したことで社内にどのような変化があったか?
- 実績や売上などの数値的な変化はあったか?
- 導入してよかったこと
- 社内からはどのような反響があったか?
- お客様から喜ばれたことはあったか?
- 担当者が感じるよかった点は?
- 今後の展望
- 今後商品・サービスをどのように活用していきたいか?
- 商品・サービスを絡めた今後の事業展開は?
「今後の展望」については、取材先企業のPRにつなげるのもひとつの手です。取材先企業が新たなサービスなどを展開していた場合は、プレスリリースやLP(ランディングページ)のリンクを貼ってあげるとよいでしょう。取材先企業も喜んでくれるはずです。
【4】インタビューの実践
インタビューはマーケティング担当者(メディア担当者)、営業担当者、取材先の担当者、撮影を行う場合はカメラマン、記事を外注する場合はライターが同席します。取材中は自分でメモを取り、必ずICレコーダーで録音もしておきましょう。
原則として、インタビューはやり直しができません。失敗することなく、なおかつ魅力的な話を引き出せるよう、以下の点を意識してみてください。
コツ1:顧客事例作りの目的をしっかり説明する
事前に企画概要を先方へと共有していたとしても、今一度口頭で記事作成の目的を説明するようにしましょう。概要とともに「以上の理由で、このようなお話を伺いたい」と改めて言い添えておけば、インタビューの方向が大幅にズレてしまうことは無いはずです。
コツ2:調べれば分かることは聞かない
例えば相手先の事業内容など、Webサイトなどを見れば分かるような安易な質問すると「それくらいは事前に調べてほしい」と思われてしまうケースがあります。仮に質問するとしても、アイスブレイクとしての事実確認程度に留めておくのが無難です。あるいは「御社の事業内容は●●だと思いますが、特にどのようなことに力を入れていますか?」など、担当者の口から詳しく語ってもらう意味がある内容にしましょう。
コツ3:質問はオープンクエスチョンで
イエス・ノーで答えられる質問のことをクローズドクエスチョン、相手が自由に回答できる質問のことをオープンクエスチョンと言います。アイスブレイクをするために最初は答えやすいクローズドクエスチョンを使うケースがありますが、基本的には具体的な回答が得られるオープンククエスチョンを活用しましょう。
コツ4:具体的なファクトやエピソードが聞けるまで深掘りする
例えば、商品・サービス導入の決め手について質問した際に「他社には無い機能があったことや、そのほかにもいろいろとサポートがあったことですね」と言われたとしましょう。この回答には、いくつか深掘りできるポイントがあります。
- 何社と比較したのか?
- 具体的にどの機能に魅力を感じたのか?
- いろいろなサポートとはなにか?
- 最大の決め手となったのはどの要素か?
記事でアピールしたい自社の強みを意識しながら、より具体的な回答が得られるまで繰り返し質問を投げかけましょう。
コツ5:雑談が広がりすぎたら軌道修正
取材先の担当者と気心の知れた営業が同席していると、ついつい話が逸れて雑談になってしまうことがあります。取材は大いに盛り上がったが、後から振り返ってみたら聞きたい内容が聞けていなかった……ということにならないようインタビューをコントロールして、準備した質問項目は全体的に網羅しましょう。もし途中で聞きそびれたことがあれば、「少し質問が戻りますが……」と言って聞き直せばOKです。
そのほか、インタビューを成功させる細かなコツやテクニックについては、弊社メディアの以下の記事が参考になります。
おまけ:顧客事例取材で撮影はするべき?
顧客事例は、撮影を行うケースが非常に多いです。文字ばかりの記事は読みにくいので、インタビュー風景だけでも撮影しておくとよいでしょう。それが記事内でのアイキャッチとなります。
撮影する場合は、事前に撮影イメージをしっかり固めておくことが重要です。どのようなアングルで、どのようなシーンを撮影したいのか。参考写真と一緒にチェックできるようにしておきましょう。
また、プロのカメラマンに依頼する場合、思いのほか機材のセッティングに時間がかかることがありますので、取材と撮影の時間配分については事前にカメラマンと打ち合わせをしておきます。
自分で撮影を行う場合は手ブレに気を付けつつ、ホワイトバランスはオートにしておくと無難です。
【5】記事執筆
インタビュー音源やメモをもとに、記事執筆を行います。このとき、いきなり書き出すのではなく、事前に文章の構成を決めておくようにしましょう。
記事構成の基礎パターン
顧客事例には、王道の記事構成パターンがあります。以下の要素を組み込んで執筆すれば概ね問題ないでしょう。
抱えていた課題
記事の冒頭で、企業がこれまでに抱えていた課題や問題点を書きます。達成したかった目標などでもよいでしょう。
導入した理由・きっかけ
商品・サービスを導入した理由を説明します。例えば機能や価格、サポート対応など、他社との差別化につながる強みが導入した理由に該当します。
導入して得られた結果
ここでは、冒頭で述べた課題をどう解決できたのかを述べます。定性的な成果と定量的な成果の両方を記載するとより分かりやすい事例になるでしょう。
まとめ(もしくは今後の展開)
最後に記事内容を総括するまとめを入れます。もしくは、取材先企業の今後の事業展開などをを書いてもよいでしょう。この場合、導入した商品・サービスを絡めた内容にできるとベストです。
以上が顧客事例の基礎パターンです。こちらをベースとしながら、商品・サービスの特性や記事の目的に応じて、強調したい箇所が目立つよう工夫しましょう。
例えば自社の強みが「導入時のサポート体制」にあるなら導入プロセスの部分を手厚くすべきですし、「多くの企業が困っている特定の課題」を解決するソリューションを提供できるなら、導入理由を強調する方法などがあります。ビフォー・アフターで定量的な効果を図れるプロダクトなら、導入結果を強調するとよいでしょう。
また、あえて導入で苦労したポイントや、商品・サービスに対する不満点を記載するケースもあります。「マイナスポイントを語るなんて……」と思われるかもしれませんが、その分「偽りのない事例を掲載している」というリアリティが出ます。同時に、その不満にどう対応をしたのかという点まで記載すれば、逆に自社の誠実さをアピールすることにもなるでしょう。
執筆でよくある失敗3パターン
インタビューと同様に、執筆時にも押さえておくべきポイントがいくつかあります。ここでは、よくある失敗例を3つご紹介します。
失敗1:相手が言っていたことをそのまま書いてしまう
執筆に慣れていない人がやりがちなミスとして「相手が言っていた話をそのまま記事に落とし込んでしまう」というものがあります。インタビュー中、取材対象者はいろいろと考えながら喋っていますので、そのまま書き起こすと取り留めのない内容になってしまいます。必ず読みやすい文章・分かりやすい言葉遣いへと書き換えてあげましょう。
また、ネガティブな話題を取り上げる場合にも同様の注意が必要です。事実を捻じ曲げるような脚色はNGですが、どうしても載せたい内容であれば、ネガティブに聞こえすぎないような工夫が必要です。
失敗2:不要な情報を盛り込んでしまう
インタビュー中や終了直後などは「すごくいい話を聞けた」と思っていたが、よくよく振り返ると顧客事例として自社のアピールにつながらないエピソードだった、ということも多々あります。記事として必要な部分だけを取捨選択して、すっきりと読みやすい内容にしましょう。
失敗3:固有名詞を間違える
顧客事例は必ず先方の担当者や広報の確認が入ります。その際に企業名や担当者の氏名を間違えていたりすると、かなりのイメージダウンです。記事制作といえど、クライアントが関わっている以上は自社の不利益にはならないようにするのが鉄則。執筆が完了したら別のメンバーにもチェックをしてもらい、ミスが無いよう徹底しましょう。
そのほか、基礎的な文章のセオリーや読みやすい文章を書くためのコツについては、弊社メディアの以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ〜まずは自社の強みを把握しよう〜
本記事でご紹介したポイントに気を付けて顧客事例記事を作れば、高い効果が得られるはずです。そのためにもまずは、自社の強みを把握することが重要です。その後、達成したい目的などを整理しつつ取材先企業を選定。導入の全容や他社との差別ポイント・自社の強みを引き出せるようにインタビューをして、その内容をもれなく記事にまとめましょう。
とはいえ、ここまで読んで「顧客事例作りってなんだか大変そうだな……」と思った方もいるのではないかと予想します。インタビューはともかく、ヒアリングした内容を文章にまとめる自信が無いという方もいるでしょう。
記事を内製するためのノウハウやリソースが社内に無い場合は、外注を検討してみることをおすすめします。
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弊社でも顧客事例の作成に関するご相談を承っておりますので、お困りの際はぜひお声掛けいただければと思います。
顧客事例作りに取り組まれているご担当者の皆様、本当にお疲れ様です。この記事で少しでも運用が楽になれば幸いです。
お問い合わせにつながる
導入事例を作りませんか?
10年以上にわたり導入事例記事を作ってきた豊富な実績をもとに、貴社の魅力をお客様の声で可視化します。
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編集協力:加藤しほ
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