インタビュー記事の書き方とは:取材の準備から執筆までを解説
( 最終更新日:2024年6月20日)
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インタビュー記事は「相手の話を聞いて、それをそのまま記事にする」といった簡単なものではありません。インタビュー歴が10年以上あるベテランライターであっても、まだまだインタビューは奥が深いと感じるほど、インタビュー記事を書くには腕と経験が求められます。
本記事では、毎年100本以上のインタビュー記事を制作する株式会社YOSCAの編集者・伊藤が、これまでの経験をもとに、インタビュー記事の書き方、作り方を「事前準備編」「インタビュー編」「原稿執筆編」の3つに分けて解説いたします。
これからインタビュー記事を制作される方の一助になれば幸いです。
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目次
インタビュー記事とは
インタビュー記事とは、企業や人物などの取材対象(インタビュイー)に、インタビュアーが取材を実施し、そこで得られた内容を踏まえて作成した記事です。
インタビュー記事には、以下の主な役割と記事の形式があります。
インタビュー記事の主な役割、目的
見込み客の不安や疑問の解消による購入促進
商品やサービスの購入の背中を押す際に、インタビュー記事は有効です。自社サービスの導入事例記事や、商品を利用しているお客様の声といったコンテンツは、商品やサービスのユーザーによるリアルな意見として見込み客に受け入れられ、購入前の不安や疑問を解消する役割をはたします。
商品・サービスの提供側が伝えたいことを書くのではなく、見込み客が直接聞きたい、知りたい内容をインタビューして、それを記事に反映させることが重要です。
一次情報をわかりやすく伝えることによる理解促進
一次情報とは「本人が体験や調査などを通して直接得た起源となる情報」を指します。例えば、商品開発した担当者による商品紹介や、特定のテーマに家精通した専門家へのインタビュー記事は、信ぴょう性が高く正しい情報が得られやすく、読者に正しい情報を伝えることができます。
会社の魅力を可視化することによる採用促進
社長/社員インタビューや、会社の施設紹介といった記事は、会社の魅力を伝えるブランディングコンテンツとして有効です。会社への興味関心を喚起し、採用活動に貢献する役割を果たします。
インタビュー記事の形式
インタビュー記事の代表的な形式として「Q&A形式」「一人称形式」「三人称形式」の3つがあります。
Q&A形式
インタビュアーと取材対象者の一対一の会話形式で、質問と回答が繰り返されます。多数ある質問と回答が、内容のつながりを持ってスムーズに流れていくよう組み立てていきます。
派生形として、質問だけでなく感想なども盛り込む対談形式があります。この場合は、口語的な表現を用いながら、臨場感のある記事にするとよいでしょう。
【文章例】
今回は記事作成のコツについて、創業よりライター育成に力を注ぐ株式会社YOSCAの伊藤さんに伺いました。
――記事作成に取り組むときは、まずどこから始めればよいのでしょうか?
伊藤:まずは、読者の姿を具体的にイメージすることから始めましょう。
――なるほど、いきなり記事を書き始めるわけではないのですね。
伊藤:そうです。そもそも記事というものは〜〜〜
一人称形式
インタビュアーの存在は記事に表さず、取材対象者が読者に語りかけるように表現する方法です。取材対象者と読者の距離感が近くなるため、記事に親しみやすさが生まれます。このスタイルで執筆する場合は、取材対象者本人になりきって書きましょう。
【文章例】
みなさんはじめまして、株式会社YOSCA編集者の伊藤謙三です。今回は、弊社のコンテンツ制作の経験をもとにして、記事執筆に取り組まれるみなさんに役立つ情報をご紹介したいと思います。
記事作成に取り組むとき、まずやるべきは読者の姿をイメージすることです。そもそも記事というものは〜〜〜
三人称形式
第三者の視点で文章を書き、取材対象者の話は「」(かぎ括弧)などで表現する方法です。ライターの視点を軸に記事内容が展開されます。補足情報やインタビュアーの解釈なども書き加えられるため、内容を論理的に整理しやすいです。
【文章例】
記事を作成する際に、まずはとのような作業を行うべきなのでしょうか。編集プロダクションとして数多くのコンテンツを作成してきた株式会社YOSCA編集者・伊藤謙三さんは「まずは読者の姿をはっきりとイメージすることから始めましょう」と説明しています。そもそも記事というものは〜〜〜
インタビュー記事の書き方:事前準備編
それでは、インタビュー記事の具体的な書き方について説明していきましょう。まずは事前準備です。この準備がインタビュー記事の出来を大きく左右します。
取材対象者がインタビューに応対してくれる時間は限られています。その限られた時間の中で有益な情報を得るためには、事前準備が大切なのです。以下では、取材当日までに行うべき作業についてを解説します。
依頼書の送付
取材を申し込むには、まず電話やメールで相手にコンタクトをとる必要があります。あらかじめ取材依頼書(企画書、申込書とも呼ばれる)を用意しておき、すぐにメール添付やFAX送付できる状態にしておきましょう。
なお、取材を申し込んだ相手から即答でOKをもらえるケースは稀です。対象者が企業人であれば、上長などへの確認が必要になることもあるからです。個人の方でも、自身の仕事やプライベートへの影響を考慮してから、取材を受けるかどうかを判断するでしょう。
このとき、情報がしっかりと整理された依頼書を用意しておけば、取材相手も社内確認や内容検討がしやすくなります。同時に、インタビューをする側の熱意も伝わりますので、結果的に取材を受けてもらえる可能性が高くなるはずです。
以下に、弊社で活用している依頼書のテンプレート及び記入例をご用意いたしました。ダウンロードしてご自由にお使いくださいませ。
質問リストと質問状の作成
取材対象者に対する質問内容は、事前に必ずリスト化しておきます。そして同時に、話の核となる質問を抜粋して質問状としてまとめ、インタビュー前に送付しておきましょう。
取材対象者としては、インタビューの場ですぐに考えて答えるのは難しいですし、毎回その場で考えていては時間もかかってしまいます。質問状は、取材対象者に全体の進行をイメージしてもらうためのものです。記載する質問数は多すぎず少なすぎず、5〜10個程度にしておきましょう。
予習・下調べ
インタビューの前に、扱うテーマや取材対象者について予習しておきましょう。特に、専門性の高い分野について取材する場合や、取材対象者が技術者など深い知識の持ち主である場合は、その分野の用語等は一通り押さえておかないと話についていけなくなるでしょう。
取材相手に補足説明してもらうことはNGではありませんが、そればかりになると相手も話す気が失せてしまいます。テーマに関連する用語や取材対象者の企業情報、過去のインタビュー記事などは最低限調べておきましょう。
持ち物の準備
以下、取材当日に最低限必要な持ち物をまとめました。ほかにも持っておくと便利なアイテムは色々とありますが、以下で紹介する持ち物は「最低限必要なもの」としてお考えください。
名刺
自分の氏名や所属が書いてある名刺を用意しましょう。挨拶のタイミングで、名刺に書かれた内容をもとに話が盛り上がることもよくあります。名刺は多めに用意しておくことをおすすめします。
時計
こちらは腕時計で問題ありません。ただし、インタビューの場ではあからさまに腕時計を覗き込むのはNG。腕から外して机に置き、さりげなく時間をチェックするようにしましょう。
ICレコーダー/スマートフォン
どちらも、インタビュー内容を録音するために使います。どちらかの録音が失敗しても大丈夫なように、2つの機材を使って録音するのがベターです。スマホはマナーモードではなく機内モードにして、着信や通知は完全オフに設定しましょう。
PC/ノートとペン
相手の話をメモするために必須です。PCはブラインドタッチができる場合のみ使用しましょう。入力のために相手から目線を逸らすのを極力避けるためです。ノートとペンでメモする場合、使い古したボロボロのものでは悪印象です。新品である必要はありませんが、きれいなものを用意しましょう。
カメラ
スマートフォンで代用するのではなく、カメラを持参しましょう。撮影技術を持っているなら一眼レフなど高機能カメラがよいですが、無理をすることはありません。
なお、落ち着いて取材を進めたいなら、カメラマン役を別に立て、複数名で取材にあたるとよいでしょう。取材中の会話の様子など、カメラ前で構えていない自然な表情を撮影することができ、写真の構図にもバリエーションが増えます。
事前準備の2つの心得
【1】5W1Hで記事作成のゴールを把握すべし
どのような記事でもそうですが、書き手が作成する記事の持つ役割を理解していないとよいものは出来上がりません。事前準備を進める中で、5W1Hを使って記事の目的や読者像を明らかにしましょう。記事作成のゴールをイメージしてからインタビューに臨むことが大切です。
What:何をテーマとして扱うのか。
Who:誰をターゲットとするのか。
Why:何を理由/目的として記事を作るのか。
Where:どのメディア/媒体で記事を掲載するのか。
When:どの時期を狙って記事を掲載するのか。
How:どのような構成・内容で記事を作るのか。
【2】下調べは徹底的に行うべし
読者が取材対象者から聞きたいのは、その分野に詳しい人間しか持ち得ない知見をもとにした情報です。下調べが不足したままインタビューに臨み、表面的な情報しか集められなかった場合、出来上がる記事も浅い情報になってしまいます。インタビューを通じて読者の求める情報を得るために、下調べは徹底的に行いましょう。それが書き手にとっての自信にもつながり、インタビュー時に堂々と質問できるようになるはずです。
取材対象者のSNSをチェックするのも有効です。SNSは取材対象者の興味関心・主張がリアルに掴めます。「Twitterを拝見しました!」という切り口から話題を広げていく、という方法もアリでしょう。
インタビュー記事の書き方:インタビュー編
ここからは、インタビュー当日のノウハウをご紹介します。インタビューをスムーズに進めたいのであれば、質問内容や進行手順だけではなく、服装や話し方・立ち居振る舞いにも気を配りましょう。取材対象者から深い話を引き出すためには、書き手に対して安心感を抱いてもらうことが大切です。
当日の服装・身だしなみ
インタビューはビジネスの場です。TPOにあった服を選び、身だしなみも清潔で爽やかな印象となるよう心がけましょう。「私が写真に写るわけではないし、何でもいいや」といった姿勢でインタビューに臨むのは、写真を撮られることを考慮して準備している取材対象者に失礼です。
基本はオフィスに対応できる服装で臨みます。スーツのほか、ジャケットとパンツの素材やカラーが異なるジャケパンスタイルなど、オフィスカジュアルでも問題ありません。ライターの業界では、堅実な印象のスーツスタイルより、少しラフな印象のオフィスカジュアルのほうが話しやすい空気感を演出できるため、よく着用されています。取材対象者の企業ホームページなどを見てオフィスの雰囲気をチェックしておけば、フォーマルさ加減の目安となるでしょう。
待ち合わせ
当日は、待ち合わせ時間の30分前には取材場所へと到着するように移動しましょう。遅刻してしまうと相手に迷惑をかけるだけでなく、インタビュアー自身も気が動転してしまい、落ち着いて質問ができなくなってしまうかもしれません。限られた取材時間を無駄にしないよう、早め早めに行動しましょう。
複数名の取材陣で取材にあたる場合は、メンバーが全員そろってから受付に向かうようにします。過去には、先に受付をしてしまったことで取材対象者がすぐに出てきてしまい、意図せずインタビューが始まってしまったというケースがありました。こうなると、あとから来た取材メンバーは話に追いつくのが大変です。メンバーが全員そろってから受付に向かうようにしましょう。
インタビューの始め方
挨拶と名刺交換が済んだからといって、いきなりインタビューを始めてはいけません。このタイミングで、企画の趣旨とインタビューの進行について改めて説明するようにしましょう。取材対象者とインタビュアー、両者で改めて確認しておくことでスムーズな進行につながります。
最初はアイスブレイクを兼ねて「普段はどのようなお仕事をされているのですか?」などと聞いてみるとよいでしょう。取材を受けてくれたからといって、取材対象者が話の得意な方とは限りません。まずは簡単な会話から入ることで相手との会話のペースを探り、話しやすい空気感を作ることから始めます。
インタビューの進め方とポイント
アイスブレイクが済んだら、いよいよインタビューを進めていきます。
インタビューに慣れた人であれば、臨機応変に質問を投げかけられますが、慣れないうちは難しいため、手元に質問リストを用意しておきましょう。
気持ちよくインタビューを受けてもらうためには、会話のテンポの良さが重要です。質問リストに沿って質問していくことで、テンポ良くインタビューできるため、話の盛り上がりをキープしやすいです。(ただし、一問一答、尋問のようなインタビューはNGです。相手が話し終えたかどうかをしっかりと見極め、場合によっては沈黙して相手の回答をじっくり待つことも必要です)
その他にも押さえておくべきポイントとして、6つのコツを紹介します。
適度に相槌を打って話しやすくする
「はい」「なるほど!」「そうですね」「わかります」など、適度に相槌を打って、取材対象者が話しやすい空気を作りましょう。
あなたが相槌を打つことで、取材対象者は「しっかりと話を聞いてもらえている」と感じるため、気持ちよくスムーズに話せます。
大げさな相槌やオーバーなリアクションは、話の腰を折ったり相手に不信感を与えたりしますが、適度な相槌は会話の潤滑油になります。
いかに気持ちよく話してもらえるかを念頭に、意識的に相槌を打つよう心掛けましょう。
ちなみに、オンラインインタビューの場合は、相手の表情や反応がわかりにくいため、少し大きめのリアクションをとるのがおすすめです。
メモではなく会話に集中する
メモに集中し過ぎずに、会話に集中して話題を引き出すのがポイントです。
インタビュー中はどうしても「メモをとらないと」と手元に注意がいきがちですが、会話への集中が疎かになったり、取材対象者が話しづらいと感じたりするかもしれません。
インタビュー中は姿勢を正して、目線は常に相手へ向けるようにし、PCやノートを見るのは最低限に抑えましょう。
取材の記録はボイスレコーダーやカメラを中心にして、メモはあくまで補助として気になったポイント(トピックや印象に残ったインパクトのあるフレーズなど)だけ記載すると、会話への影響を最小限に抑えられます。
「興味を持っている」「関心がある」と態度・姿勢・表情から伝わるように、まずは会話をすることに専念して、取材対象者が楽しく話せるように意識しましょう。
しっかりと話を聞いてもらえていると感じれば、思いがけないエピソードや話題を引き出しやすくなるので、より深みのある記事に仕上げられるようになります。
メモを取るのはインパクトのあるフレーズや深掘りたいことのみ
メモは、取材の記録の役割としてよりも、次に問いかける質問を考えるための素材として活用することをおすすめします。
例えば、もっと深掘りしたいと思ったことをメモっておいたり、インパクトのあるフレーズをメモっておいて、話が落ち着いたタイミングで、そのように発言した意図や根拠、詳細などを聞いてみたりします。
「新商品の発売で例年より10倍の売上になった」「新サービス開始の発表がTwitterでトレンド入りした」「採用への応募が平年の3倍になった」など、それだけで目を引くようなインパクトのあるフレーズは、タイトルや見出しに活用しやすいため、さらに深く聞くことが重要です。
理由や具体例を深掘りする
インタビューの際は、事実だけを聞くのではなく「なぜそうしたのか?」理由や具体例を聞くことで、取材の内容が深まります。
ただ事実を語ってもらうだけなら、事前のリサーチでもある程度調べられることに加え、事実の背景がわからないことで読者が納得しにくくなってしまいます。
例えば、新規ビジネスを展開した企業へ取材する際は、新商品・新サービスが発売されるという事実よりも「なぜ発売すると決めたのか」「どのような開発エピソードがあったのか」など理由や具体例があると、より納得感のある内容に仕上げられるでしょう。
取材対象者からの回答には、理由や具体例を深堀りする意識が大切です。特に曖昧・抽象的な回答は「5W1H」を活用して質問しましょう。
例えば「新商品を開発することになった」と回答されたら「なぜ開発すると決まったのか」「いつ決定したのか」「どのような企画案が出たのか」など、気になるポイントを深掘りしていきます。
理由や具体例を深堀りして、具体的にイメージしやすい回答を引き出せるよう努めましょう。
何気ない会話や雑談から人柄がわかる話題を拾う
インタビュー終了後も含めて、何気ない会話や人柄がわかる話題も拾って、取材対象者ならではのエピソードを引き出すのがポイントです。取材対象者の人柄を伝えることで、親しみが生まれ面白く読める記事に仕上がります。
本筋から脱線した話題や何気ない会話・雑談など、取材目的には直接関係なさそうなエピソードも記事に盛り込むと、より読み応えのある内容に仕上げられる場合もあります。
特にインタビュー終了後は緊張が緩んでいるため、いつも通り話してもらいやすい瞬間。本音やエピソードを引き出しやすくなっています。
どこで面白い話題を引き出せるかわからないため、インタビューが終わっても、気を抜かずに記録しましょう。忘れてしまうのが怖いという方であれば、「失礼します」と取材対象者と別れるところまでずっとレコーダーをオンにしておいてもよいでしょう。
時系列を意識して質問する
現在だけでなく過去や未来の話題も聞くと、ストーリー立ったインタビューを行えます。過去や未来の話題も質問するとストーリー性を出せるため、展開のわかりやすい記事に仕上げられます。
時系列順に整理して質問すると背景や根拠がわかりやすく、理解しやすい記事になるので、時系列を意識した質問を行いましょう。
例えば「新商品の発売」に関する取材の場合、新商品の発売に至る悩み・課題といった過去の話題があると、なぜ新商品を発売する必要があったのか説得力のある回答を得られます。
また、今後どのような商品展開をしていくのか、未来について質問すると「新商品を発売した重要性」の補強にもつながるでしょう。特に「過去」の話題は、現在と直接つながる話題のため、読者が気になりやすい部分です。
インタビューの際は時系列を意識して、現在の話題から広げられるよう努めましょう。
インタビューの終わらせ方
用意した質問をあらかた聞き終わったら、取材対象者や同行者に対して「インタビューが終わりに近づいている」という合図を送ります。例えば、最終質問の前に「それでは最後の質問とさせていただきます」と前置きをして終了間近であることを示唆する、などといった方法が考えられます。
これにより、取材対象者も伝えたいことを伝え切ろうとしてくれます。同行者がいる場合は、合図を出したうえで最後に「〇〇さん(同行者)から何か伺いたいことはありますか?」と話を振ってみましょう。インタビュアーが忘れている質問などがあった場合はリカバリーしてくれるかもしれません。
インタビューの4つの心得
【1】インタビューは「目的」ではなく「手段」である
慣れないうちは、インタビューの場そのものを滞りなく進めることに腐心しがちです。しかし、インタビューはあくまで良質なコンテンツを作るための手段のひとつ。取材対象者に気を遣って無理に盛り上げたり、相手によく見られようとしたりする必要はありません。聞きにくい質問であっても躊躇せず貪欲に、読者のためになる情報を獲得しにいく攻めの姿勢を持ちましょう。
【2】取材対象者に「記事の目的」を理解してもらうべし
取材対象者から情報を引き出すためには、5W1Hを意識して臨むと共に、記事作成の動機や目的、想定読者、読者に持ってもらいたい感想などをはっきりと伝え、理解してもらいましょう。
【3】知ったかぶりはせずに質問し尽くすべし
インタビュー中に知らない情報が出てきたら、どんどん深掘りして質問を重ねていきましょう。逆に、既に知っている話であってもしっかりと聞きましょう。「何となくは知っている情報だから……」「あとで調べればいいから……」などといったように中途半端な理解のままでは、”取材対象者の独自の知見を活かす”というインタビュー記事の意義と矛盾してしまいます。もちろん、最低限の下調べはしたうえで、知ったかぶりはせずに何でも聞いてしまいましょう。
【4】相槌のレパートリーは複数持っておくべし
インタビューの場を盛り上げ会話をスムーズに進めるために、相槌のレパートリーをたくさん持っておくとよいでしょう。「はい」「なるほど」「そうですね」「わかります」などの相槌により「あなたの話をしっかりと聞いていますよ」と感じてもらうことで、取材対象者は安心してお話ができるようになります。
ただし、「なるほど」「わかります」などの同意の相槌は、多用しすぎると次の質問につなげにくくなるので注意が必要です。そのほかにも、うなずく動作や、相手が言ったことをそのまま繰り返すオウム返し(相手の発言をそのまま繰り返すテクニック)にも、相槌と同じ効果が期待できます。
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インタビュー記事の書き方:原稿執筆編
インタビューが無事に終わったら、最後に残る作業は原稿の執筆です。インタビューによって得られた有益な情報を、記事としてまとめていきましょう。YOSCAでは音源や動画から記事を作成するサービスも行っており、豊富な経験をもとにお話しすることができます。
以降では、原稿を執筆する際にやるべき作業や、書き方のコツなどについて解説します。
文字起こし
インタビューの録音・録画データから、取材内容を文字に起こします。インタビュー内容を手作業で全て正確に書き起こすのは大変で、相当な時間が必要。1時間のインタビューでも、全文を書き起こすには約3~4時間はかかります。
誰かに見せるわけでなければ、記事に必要な部分だけ文字起こしするのがおすすめです。
ちなみに文字起こしには、以下3つの段階があります。
- 素起こし:録音されている全ての音を文字化する方法。「えっと」「あー」など意味のない言葉や、言い間違いなども文字にするため理解しにくいものの、インタビュー時の臨場感が伝わりやすくなります。
- ケバ取り:意味のない言葉を取り除いて文字化する方法。読みやすく理解しやすい記事に仕上げられます。
- 整文:文章を整えて読みやすくする方法。順番を変える・書き言葉に修正するなど、読みやすく文章を整えます。文字起こしの中でも時間がかかる方法です。
ケバ取りで大まかな文字起こしを行ってから、記事の構成に合わせて文章を修正していくのが一般的です。記憶が新鮮なうちに行うと、取材時の雰囲気や前後の文脈を思い出せるため、重要なキーワード・フレーズを見逃しにくくなります。
当然ながら取材時間が長いほど文字起こしには多くの時間がかかるため、対応が難しい場合はアウトソーシングするのも一つの手です。もしくは、文字起こし用のツールで自動的に文字起こしするのも、作業時間が短縮され効率的です。
ただし誤字やミスを100%防ぐのは難しいため、自身でチェックして精度を高めるのがおすすめ。あくまで補助的なツールとして使用しましょう。特に複数名の会話である場合や、雑音が多い場合は精度が低くなりがちです。
また、取材情報の裏取りは必ず行いましょう。取材対象者はあやふやな記憶で回答したり、思い付きで話したりする場合もあります。数字や日付、商品情報などのデータは必ず裏取りして、事実と異なる場合は修正しましょう。
執筆のポイント
文章構成と表現の方向性が決まったら、執筆していきます。あとで見直しをすると割り切って、とにかくまずは最後まで書き切りましょう。
タイトルや見出しなどは、執筆後に考えた方が情報が整理され、適切なワードを見つけやすくなります。執筆前や途中で悩まず後回しにし、どんどん書き進めましょう。
会話をそのまま書くだけでは意味がない
インタビュー記事は、会話をそのまま書いただけでは意味がありません。会話をそのまま記事にしても、読みやすくなることはまずないでしょう。取材対象者の発言を並べ替え、発言内容を補足し、読みやすいよう手を加えるのは悪いことではありません。むしろ必要な作業であり、ここでライターの手腕が発揮されると言っても過言ではありません。
また、実際に話されたインタビューの言葉(口語)をそのまま文字にしてもわかりにくいため、書き言葉(文語)に修正して読みやすくしましょう。
そのほか、読者が理解しやすい記事に仕上げるには、以下のような工夫が大切です。
- 主語・述語を明確にする:業務効率化に大きく貢献しました→新たに導入したツールが業務効率化に大きく貢献しました
- 省略された部分を補う:新情報です→今回初めて公開する新情報です
- 助詞を追加・補足する:発売に5年かかりました→発売までに5年かかりました
- 1文を短くまとめる:70〜100文字程度
- 冗長な部分を省く:開発させていただきました→開発しました
必要に応じて修正・補完して、誰が読んでもわかりやすい文章となるように整理しましょう。
取材対象の人柄・キャラを表現する
人柄・キャラを記事に盛り込むコツとしては「口癖や印象的なフレーズなど喋り方をそのまま文章に活かす」「その人ならではのエピソードや背景を入れる」などの方法が挙げられます。
文章面での工夫以外に、インタビュー中の会話風景や笑顔のシーンなど、取材対象者の写真を掲載するのもおすすめです。
真意が曲がらないよう注意する
過度な修正で、事実を曲げたり語弊があったりしないよう注意しましょう。話し言葉を書き言葉に修正することは、読みやすくなる一方で、事実と異なる内容になったり、ニュアンスを間違えたりする危険性があります。
読者にわかりやすくするためには文章の整理や修正・補足が欠かせませんが、取材対象者の意図を慎重に汲み取って、真意を曲げてしまわないように注意しましょう。
公開後にトラブルに発展しないためにも、表現には十分注意して、内容に問題ないか取材対象者に確認してもらうことも大切です。
読みやすい話の流れを作る
インタビュー記事を書くポイントは、質問と回答が分断されないこと。常に話が流れていくようなイメージで書き上げると、最後まで読んでもらえる記事になります。
読みやすい流れを作るコツは「質問者が話し手の発言を要約する」ように文章を整えることです。
例えば、以下のような流れが挙げられます。
――新商品の開発で、こだわった点を教えてください。
取材対象者:今までにない、斬新なフレーバーを出すことです。市場調査中に「どこのチョコを買っても大体一緒」「あんまり違いがわからない」という声があったので、他社との違いを出していこうとなりまして。聞いたことのないような、想像できない味に仕上げました。
――目新しさのなさを払拭するために、奇抜な味付けを行おうと思われたんですね。
このようにインタビュアーが話し手の発言を要約することで、会話の流れが生まれ理解しやすくなります。反対に、話の展開が唐突だったり、途中で分断されていたりすると、記事の途中で離脱されやすくなります。
インタビュアーの質問部分だけを読んでも、文章全体の意味がわかるように配慮しましょう。
書く内容は必ず選別・整理する
インタビュー記事の価値は、インタビュアーが取材対象者から有益な情報を引き出し、それを論理的にわかりやすく、魅力的に構成して言語化することで生まれます。ライターにとって、情報の取捨選択と整理は必須にして最重要な作業です。決して手を抜かないようにしましょう。
情報を取捨選択する際は、取材対象者目線ではなく「読者目線」で取り組むことが大切です。例えば、自社ブランドについてをテーマにインタビューすれば、取材対象者は当然ブランドに対する思い入れやこだわりを語るでしょう。
しかし、記事に必要なのは「どれだけ思い入れがあるか、こだわっているか」という取材対象者の情熱ではなく、その思い入れやこだわりが技術やサービス、デザインを通じてどうブランドに反映され、ユーザー(読者)へのメリットにつながるのかということです。インタビュー時の話のボリュームや盛り上がりに惑わされず、読者の期待を満たす記事を作るために情報を選別していきましょう。
執筆よりも見直しに注力する
記事をスムーズに書くにはコツがあります。インタビュー記事に限ったことではありませんが、記事作成は執筆3割・見直し7割くらいで取り組むとよいでしょう。まずは集中して原稿を書き上げ、その後見直しする時間を十分に設けます。
なお、執筆した直後に見直しをしても、内容を完全に理解しているライターでは読みにくさや情報不足、表現の違和感に気づきません。数時間後、または翌日など時間を空けてからチェックするようにしましょう。
原稿の確認依頼
原稿を書き上げたら取材対象者へ記事を共有し、内容に問題はないか、情報に過不足はないかを確認してもらいましょう。記事が世に出てから共有して、もし「私はこんなこと言っていない!」という意見が出てしまうと大変です。修正が可能な段階で共有しておきましょう。
とはいえ、もし修正希望があったとしても、必ずしもすべてを指示通りに修正しなければならないわけではありません。取材対象者の修正の意図をしっかりと確認し、こちらから提案をしながら、記事の趣旨に反しないように修正しましょう。時には、取材対象者に理解を求めることも必要になります。そのためにも、取材申し込み時には企画内容をはっきりと伝えておくことが重要になるのです。
まとめ
良質なコンテンツを生み出し続けるのはとても難しいもの。世のメディア担当者は大変な苦労をしながら作業を進めていることでしょう。そんな苦しい状況を打破するため、取材やインタビューはとても有効な方法であると言えるでしょう。
一方で、対面でのコミュニケーションスキルや特有の表現方法など、通常の記事作成よりも技術が必要であるのも事実です。慣れないうちはそれなりの苦労をしながら進めることになりますが、スキルを身につければ、取材すればするほど扱う情報の幅が広がり、新しいコンテンツを生み出せるようになるでしょう。ぜひ、本記事を参考にチャレンジしてみてくださいね。
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課題を感じていませんか?
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【参考】インタビュースキルを磨きたい方へ
ここまで、インタビューの事前準備から、インタビュー本番の流れ、原稿の執筆方法まで紹介してまいりました。この工程のなかで、もっとも技術が求められるのが「インタビュー本番」です。いかに読者に面白いと思ってもらえる情報をインタビューを通して伺えるのか、インタビュアーの腕の見せ所です。
しかし、なかなかインタビューのトレーニングができる場所は多くありません。いくつかインタビュー講座は存在しますが、インタビューの実践トレーニングまで行っているものは、さらに少なくなります。そこで、インタビューの実践トレーニングを積める講座を紹介します。それがVRで学ぶインタビュートレーニング講座です。
この講座は、インタビューでよく起こる6つのシチュエーション(取材相手が取材に慣れていない、取材相手が取材慣れしている、取材相手が無口、取材相手がおしゃべり、取材時間が急遽短くなってしまった、取材相手を不快にさせてしまった)をVR上で体感することができます。NGパターンとOKパターンを学ぶことができ、また、テロップに合わせて声を出し、インタビューの疑似体験することも可能です。
インタビュースキルを磨くには「場数を踏む」ことに尽きます。インタビュースキルを磨きたい方は、ぜひご覧になってみてください。
編集協力:佐藤千夏
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