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上手い文章の書き方に悩む人に伝えたい、たった1つのテクニック

上手い文章の書き方に悩む人に伝えたい、たった1つのテクニック

最終更新日:2023年10月4日)

文章を上手に書くためには様々なコツがあります。しかし、それらを忠実に守って執筆をしている方の中にも、自分の文章が「上手い文章」だと自信を持てない方は多いのではないでしょうか。webライティングの世界で細々と生計を立てている筆者もその一人です。

本記事では、上手い文章を書くためのテクニックを、ライターの実体験を元に紹介します。

◉本記事の著者
青井 なの
東京・多摩地区出身のフリーライター。国立大学農学部を卒業後、第一次産業関連の店舗運営や食品メーカーの商品企画職を経験。在職中に受講したライター講座※をきっかけに文筆業を志し、IT系スタートアップでのメディア運営を経て、2020年に開業。主に、食品・飲食店・農水産業・SDGs等のテーマで取材・執筆を行う。趣味は畑、星空撮影、猫の世話。▶X(Twitter)

なお、この記事では基本的な文章術や表現技法については、深くは解説しません。基本を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

参考記事

「上手い文章」とは何だろう?

どんな文章を「上手い」と感じるかは人によって違います。有名作家の作品でも、難解すぎたり文体のクセが強すぎたりして、途中で離脱してしまうことはよくあります。その一方で、特別な事情で文字書きがままならない人が一生懸命に書いた手記に、深く衝撃をうけることもあります。

一体、「上手い文章」とは何なのでしょう?

上手い文章とは技術・手法が優れた文章のこと

上手い文章といわれたとき、一般的には下記のような要素が思い浮かびます。

  • 明確・簡潔
  • 創造的
  • 語彙が豊富
  • 論理的
  • 感情を刺激する
  • 共感を生む

この方向性で「上手い文章」を説明するなら、このようになるでしょうか。

「上手い文章とは、読みやすく、意味が理解しやすく、難しいことも平易な言葉で説明されていて、新しい発見があって――」

しかし、筆者はこれが腑に落ちません。上手い(または下手)という評価の基準とするには、どうにも感覚的すぎるのではないかと思えるからです。

ヒントは辞書にあった

「上手い」という言葉の意味を辞書で引いてみると、こう書かれています。

(「上手い」「巧い」とも書く)技術的にすぐれている。また、事の進め方などが巧みである。じょうずだ。巧妙だ。手際がよい。「—・い絵」「—・く言い逃れる」「人使いが—・い」⇔まずい。

weblio辞書 デジタル大辞泉より

「上手い」の意味が「技術的にすぐれている」ならば、【上手い文章とは技術・手法がすぐれた文章のこと】と定義できます。この定義で、筆者は心が救われたような気がしました。世の中に、技術的にすぐれていなくても価値のあるものは、たくさんあるからです。

この章の冒頭で例に出した「文字書きがままならない人が一生懸命に書いた」文章は、技法の面で稚拙なら「上手い文章」ではないといえます。しかし、上手くないから駄目だというわけではありません。読者の誰かを感動させられたのなら、それは「価値のある文章」なのです。

上手い文章は目的達成の手段

技法は拙くても、価値のある文章はたくさんあります。では、どうして私たちは「上手い文章」を追い求め、苦しむのでしょうか。

その理由は、「上手い文章」が目的を達成するための手段・道具になるからであり、目的達成への速度や確率を上げるために上手さのレベルアップが必要だからだと、筆者は考えます。

文章の第一の目的は、「何かを誰かに伝える」ことです。そして、文章で伝えるためには「読んでもらう」ことが必要です。いくら熱意を込めて書いても、伝えたい人に読んでもらえなければ、全く意味がありません。

子どもの文章には、その子の親や祖父母等の読者がいます。芸能人の場合は、ファンが読者になるでしょう。これらの場合は著者自身への興味関心が読む原動力になるため、文章の上手さはそれほど必要とされません。

しかし、”何者でもない私”の文章を多くの人に読んでもらうのは、とても難しいことです。だから、技法の力を借りて、より読んでもらいやすく、伝わりやすくする努力をするのです。

上手い文章は読み心地がよい

読んでもらいやすい文章を書くためには、「読み心地」も大切です。読み心地は、読む作業を後押ししてくれます。読者の集中力が落ちたり、意味がすぐに理解できない表現にあたったりしても、読み心地がよければ止まらずに読み進められます。

究極的には、文章の意味は理解できなくても、読み心地だけで満足する場合もあります。筆者にとってのそれは、中学や高校の教科書で読んだ古典文学です。平家物語や徒然草、枕草子の有名な一節は、古文の訳し方を忘れてしまった現在でも、その一部を聞けば次に続く言葉が自然に思い出されます。

文章の書き方のコツとして、内容や文法の他に「リズム」「テンポ」「響き」という音に関係する言葉が出てくるのには、そのような理由があるのかもしれません。

参考動画

上手い文章を書くためのコツは「音」

では、上手い文章を書くためには、どうしたらよいのでしょうか。【上手い文章とは技術・手法がすぐれた文章のこと】との定義に基づけば、模範解答は「さまざまな文章術を学び、実践する」となるでしょう。しかし、それが簡単ではないからこそ、あなたは今この記事を読んでいるのだと思います。

そこで、筆者が実践しているひとつのコツを紹介します。ポイントは、「音」。上手い文章が持つ「読み心地のよさ」という共通項を最優先して書き進めるテクニックです。

声や音で読みながら書く“音読記法”のすすめ

音に着目した文章の書き方とは、「声に出して読みながら書く」方法です。この方法の一般的な呼び名は特に見あたりませんので、便宜的に本記事内では“音読記法”と呼ぶことにします。

“音読記法”のやりかた

  1. 文章をブツブツと呟きながら書く
  2. 書けた文章を音読しながら細部の表現を修正する
  3. ある程度書けたら通読して情報の過不足や論理展開を修正する
  4. コンピュータの音声読み上げ機能を使って文章を聞きながら推敲する

音読しやすい文章は、書き方の基本ができている

声に出しても、音で聞いても、すんなりと頭に入ってくる文章には、表記に関すること以外の文章術の多くが詰めこまれています。

たとえば、「一文を短く、同じ語尾や接続詞を多用せず、主語と述語は近くに置く」というコツを満たしている文章は、音読しやすく理解もしやすいものです。推敲の段階では「リズミカルさ」を研くように、言葉を足したり引いたり交換したりすると、さらに納得のいくものになっていきます。

会社やコワーキングスペースなど、声を出すのがはばかられる場所で書いている場合は、コンピュータの音声読み上げ機能とイヤホンを使って文章を聴くとよいです。自分で読むよりも客観的になれるため、「てにをは」の間違いや、同じ接続詞や文末表現の連続、回りくどい表現等に気づきやすいです。

“音読記法”を勧める根拠

「どんな画期的な方法かと期待したけど、その程度か」と、ガッカリした方もいるかもしれません。しかし、決して筆者の思いつきだけで“音読記法”を勧めているわけではないのです。

文章のプロも音読の重要さを説いている

誰もが認める文章のプロの中に、文章と音読の関係性について語っている人物がいます。

明治後期から昭和中期にかけて活躍し、伝統的な日本語による美しい文体を確立したことで知られる小説家の谷崎潤一郎は、1934年に刊行された随筆集『文章読本』の中でこう書いています。

かように申しましたならば、文章に対する感覚を研くのには、昔の寺子屋方式の教授法が最も適している所以が、お分かりになったでありましょう。講釈をせずに、繰り返し繰り返し音読せしめる、或は暗誦せしめると云う方法は、まことに気の長い、のろくさいやり方のようでありますが、実はこれが何より有効なのであります。

谷崎潤一郎『文章読本』(中公文庫、1996年)より抜粋

また、2001年から約16年間にわたり読売新聞の1面コラム「編集手帳」を執筆した竹内政明は、2013年発行の著書『「編集手帳」の文章術』の中でこう書いています。

私はいわゆる名文というものを「声に出して読んでも呼吸が乱れない、すなわち耳で書かれた文章のこと」と解釈しています。(中略) 経験から申し上げれば、つかえたり、息継ぎが苦しくなったりしたときは、かならずそこに何かしらの欠陥が潜んでいます。文章上の不良品を嗅ぎ分けて、「耳」ほど優秀な感知器はありません。

竹内政明『「編集手帳」の文章術』(文春新書、2013年)より抜粋

文章の味わいを鋭敏に捉えるために、古来の名文を暗唱できるほど何度も読み、自分でも多くの文章を書くことが重要だと述べた谷崎と、耳で書くことが習慣化され職場でひとりパソコンに向かってブツブツと日々つぶやき続けた竹内。そうして生み出された両者の文章の読み心地は、ぜひ実物の書籍から感じ取っていただきたいです。

科学的にみた音読の効果

音読の効果は、科学的にも解明されようとしています。

脳機能開発研究の国内第一人者といわれる東北大学教授・川島隆太氏によると、音読や計算により、脳の前頭前野が活性化することがわかっています。黙読よりも音読のほうが脳の活性化する部位は広く、音読では大脳の70%以上の神経細胞が働くため、川島教授は記憶力や理解力を上げるトレーニング方法として音読を推奨しています。

参考記事

以上のように、文筆家たちの経験則と脳科学研究の両側面から、音読の効果が語られています。“音読記法”を文章上達のコツとして勧める筆者の自説にも、一理あると感じていただけたのではないでしょうか。

基本的な文章の書き方・作法まとめ

最後に、文章の書き方として一般的に言われることが多い事項をまとめます。初心者だけでなく、ある程度文章作成に慣れている中級者も振り返りに活用してください。

構成作成のポイント

文章を書き始める前に、全体の話の流れや、どの段落で何を書くかといった文章の骨組みをまとめます。これが、いわゆる文章構成です。

1.大原則は「既知から未知へ」

構成作成のポイントは、「既知から未知へ」。読者を記事の結論まで導くために、読者がすでに知っている情報やイメージしやすい情報から始めて、徐々に本題へと論理を展開していきます。

2.見出しを見れば内容がわかる

ある程度の文字数がある文章では、内容のまとまりごとに記事を区切って、見出しを付けます。その際のポイントは、見出しだけで記事の中身を把握できるようにつくることです。

特にweb記事の場合は、読者が閲覧にかける時間があまり多くありません。一見してわかりにくそうに感じられてしまうとすぐに離脱されてしまうため、目次や見出しの中に、読者の興味を引く文言が見つかることが大切です。

参考動記事

執筆のポイント

構成がまとまったら、執筆作業に入ります。“音読記法”と文章術が活躍するのはこの時です。執筆のポイントは数が多いため、ここでは音読で気づきやすいものと、気づきにくいものに分けて列記します。それぞれの文章術の詳しい解説は、参考記事にてご参照ください。

1.音読で気づきやすい文章術のポイント10選

文章術と呼ばれるもののうち、音読により気づきやすいのは以下のようなポイントです。

  1. 一文の長さは40〜70字程度、一文一義で記述する
  2. 読点は一文に1〜2個程度
  3. 主語と述語を明確にし、主述のねじれを避ける
  4. 同じ単語・接続詞・語尾・指示語等を連続させない
  5. 体言止めを多用しすぎない
  6. 「こと」「という」をなるべく使わない
  7. 書かなくても文章の意味が伝わる部分を削る
  8. まわりくどい表現を避ける
  9. ですます、だであるの統一
  10. 修飾語を多くしすぎない

2.音読だけでは気づきにくい文章術のポイント5選

こちらは、音読しただけでは気づきにくいポイントです。

  1. 漢字とひらがなのバランス:漢字は全体の3割程度に
  2. 専門用語の扱い方:読者ターゲットに合わせて考える
  3. 誤字や表記ゆれ:音だけでは判別できないので要注意
  4. 慣用句等の用法:耳馴染みがよくても用法として正確とは限らない
  5. 全体の文章量:箇条書きや図等を用いて情報量を変えずに文章量を減らす
参考動記事

タイトル・リード文作成のポイント

リード文とタイトルは、記事の顔となるとても重要な要素です。

1.タイトルは32文字以内で魅力を表現する

記事のタイトルは、読者の第一印象を左右します。web記事の場合、記事リンクをクリックするか否かの判断は一瞬で行われます。検索エンジンで表示されるタイトル文字数は32文字程度ですので、32文字の中に読者のフックとなる情報を詰めこむ必要があります。

参考動記事

2.リード文の仕上げは最後に

リード文は、読者が本文を読むかどうかを決める、とても重要なパートです。記事の冒頭を飾る文章ですが、執筆の順序は必ずしも始めが適しているわけではありません。本文が完成して、記事のメッセージが明確になってからのほうが、より魅力が伝わるリード文に仕上がります。もちろん、執筆の始めにリード文を書いてもよいですが、最後には必ず見直すようにするとよいでしょう。

参考動記事

【まとめ】上手い文章は1日にして成らず

本記事では、文章上達のコツとして“音読記法”を紹介しました。しかし、音読は魔法の杖ではありません。上達のためには、「名文を繰り返し読み、自分でも書く」という、日々の地道な鍛錬が必要です。いわば、「上手い文章は1日にして成らず」です。

文章には、再現性のあるレシピが存在しません。同じ題材、同じ材料を元にして作っても、できあがる文章は書き手や書く時によって変わります。それが文章の面白みであり、苦しみでもあるのではないでしょうか。筆者は今後も音読を活用して、さらなる文章の深みへと沈んでいこうと思います。あなたも一緒に、いかがですか?

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青井なの
東京・多摩地区出身のフリーライター。国立大学農学部を卒業後、第一次産業関連の店舗運営や食品メーカーの商品企画職を経験。在職中に受講したライター講座※をきっかけに文筆業を志し、IT系スタートアップでのメディア運営を経て、2020年に開業。主に、食品・飲食店・農水産業・SDGs等のテーマで取材・執筆を行う。趣味は畑、星空撮影、猫の世話。 ※宣伝会議編集ライター養成講座(東京教室32期)卒業制作最優秀賞