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ライターは「誰でもできる仕事」なのか?業務内容・必要なスキル・収入の相場をプロが解説

最終更新日:2023年3月13日)

「ライターは自由!」
「ライターは誰でもできる!」
「ライターは稼げる!」

SNSなどで、たまにこのような意見を見かけることがあります。ライター講座を運営している私の感想としては「確かにそういう側面もあるが、やや語弊があるな…」といった具合です。

職業としての認知度は非常に高いものの、その具体的な中身は意外と知られていない「ライター」というお仕事。文章を書く仕事、というところまでは分かりそうですが、それ以上はイメージしづらいと思います。

果たして、ライターとは一体どのような仕事なのでしょうか。そして本当に「自由で/誰でもできて/稼げる」仕事なのでしょうか。当記事では、「あなたのライターキャリア講座」を主宰する私が、ライターという仕事の中身をプロ視点で分かりやすく解説したいと思います。

ライターの定義と役割

ライターの定義

まずは、ライターという仕事の定義について見ていきましょう。前提として、ライターという仕事にはさまざまな解釈があり、明確な定義はありません。「ライターって何なの?」と感じてしまうのも無理はないでしょう。なるべく噛み砕いて解説したいと思います。

前述のとおり、ライターという仕事にはさまざまな解釈があります。例えば、広義では「文章を書く人」と解釈されます。「文章を書いてお金を稼ぐ人」とも言い換えられるでしょう。

広義のライターの例としては、Webライター、ブックライター、PRライターなど、情報伝達を目的とした活動のほか、エッセイストなどの文芸的な活動も含まれます。

狭義のライターは、一言で言えば「商業ライター」です。私なりの言葉で言い換えると、「依頼主から対価をもらい、依頼主の要望に沿って文章を書く人」となります。企業もしくは個人から記事制作の依頼を受け、報酬をもらう代わりに記事を執筆します。

「ライター」と聞いて、真っ先にエッセイストなどといった文芸的な活動をイメージされる方もいることでしょう。実際には、情報伝達を目的とした商業的な活動が大半です。当記事では、こうした商業的な執筆活動を「ライター/ライティング」と定義し、以降の解説を進めていきたいと思います。

ライターに求められる役割

ライターに求められる役割は「記事執筆を通じて依頼主が抱える課題を解決すること」です。やや難解な表現ですので、これから順を追って解説したいと思います。

依頼主とライターの関係について見ていきましょう。依頼主は、記事作りをライターに任せたいと考えています。その理由はさまざまですが、例としては以下のようなものがあります。

では、そもそもなぜ依頼主は記事を欲しているのでしょうか。その背景には、依頼主が抱える何らかの課題があります。課題の例としては、以下のようなものがあります。

依頼主はこうした課題を解決すべく、文章のプロ・記事制作のプロであるライターに協力を求めているのです。そしてライターは、プロとしてさまざまな技能を活用しながら記事を執筆します。

このようにして、ライターは「記事執筆を通じて依頼主が抱える課題を解決すること」を目指すのです。

ライターの就業形態

ライターの就業形態は、大きく「フリーランス」と「会社員」の2パターンに分けられます。前者は「フリーライター」という名称が一般的です。後者に関してはさまざまな呼び方がありますが、当記事では「会社員ライター」と呼ぶことにします。

以下、それぞれの就業形態の特徴について解説します。

フリーライターの特徴

会社などには所属せず、個人事業主として活動するのがフリーライターです。「ライター」と聞いて多くの方がイメージするのは、こちらのフリーライターかと思われます。

フリーライターの特徴は、「働き方を自分で選べる」という点です。仕事内容、一日の業務スケジュール、働く場所など、すべての事柄を自分自身でコントロールできます。また、受注する仕事量もコントロールできますので、案件を多くこなせばこなすほど収入は増加していきます。

このように、多くを自身の裁量で決められるフリーライターは、ワークライフバランス(生活と仕事の調和)を実現しやすい就業形態であると言えるでしょう。例えば仕事と育児、例えば仕事と趣味、といったように、自分の理想とする生き方ができるようになります。

ただし、「働き方を自分で選べる」ということは、裏を返せば「すべて自分でやらなければならない」ということでもあります。

まず、自らアクションを起こさない限り仕事は舞い込んできません。そして、アクションを起こしたとしても仕事が得られるかどうかは分かりません。常に安定して仕事を獲得できる保証はありませんので、収入は不安定になりがちです。

また、スキルアップが難しいというデメリットもあります。例えば会社勤めであれば、新人研修や上司からの指導により、スキルは自然と身に付いていくことでしょう。フリーライターの場合、基本的にこのようなサポートはありません。情報は自ら取りにいかないと手に入りませんし、どのスキルもすべて独学で身に付けなければなりません。

フリーライターは自由度が高い一方で、すべての判断・行動が自己責任になります。仕事の量や時間を自身で上手く管理できる人、自身のキャリアをしっかりとマネジメントできる人に適した働き方であると言えるでしょう。

会社員ライターの特徴

会社員ライターは主に、出版社や編集プロダクション、オウンドメディアを持つ企業に雇用されています。企業やメディアによっては「記者」と呼ばれることもあるでしょう。

会社員ライターとして活動する場合の最大のメリットは、さまざまな面での安定感です。会社員の場合は、決まった額の給与が定期的に支払われます。ボーナスなどを除けば、毎月の収入が大きく上下することはほぼありません。加えて、有給休暇制度や家賃補助など、福利厚生制度による会社からの援助を受けられるので、フリーランスと比べると生活が安定しやすいです。

そして、社会的な信用度が高いという点も大きなメリットです。「毎月一定の給与が得られている」という保証があるため(フリーライターと比べると)各種契約時に審査が通りやすいとされています。審査の例としては、住宅ローン契約、物件の賃貸契約、クレジットカード作りなどが挙げられるでしょう。

このように安定感のある会社員ライターではありますが、いいことばかりではありません。やはり、フリーライターと比べると働き方の自由度は低めです。

会社員として働く以上、その会社のルールには従わなくてはなりません。勤務地や勤務時間などを指定されているケースがほとんどです。やりたくない仕事を任されてしまうケースも多々あるでしょう。

さらに言えば、「一緒に働く人を選べない」という点をデメリットに感じる人もいます。組織の中で活動するとなると、固定されたメンバーと長期にわたって交流する必要があります。フリーライターと比べると、人間関係のトラブルは多くなってしまうかもしれません。

会社員ライターとして働く場合、「たくさん働いてたくさん稼ぐ」というのは難しいかもしれません。安定して収入を得たい人や、チームで働くことが好きな人に適した働き方と言えるでしょう。

ライターの業務内容

続いては、ライターが担う業務の内容について見ていきましょう。担当する業務は人によってさまざまではありますが、ここでは「中堅フリーライター」を想定しつつ、業務内容の解説を進めたいと思います。

原稿の作成

ライターの代表的な業務として、原稿の作成が挙げられます。この業務について「ひたすらに文章を書く」というイメージをされるかもしれませんが、実はそうではありません。むしろ、文章を書いていない時間のほうが長いです。

原稿を作成する際、その工程は大きく「リサーチ」と「執筆」の2つに分けられます。リサーチの段階でさまざまな情報を収集し、得られた情報を整理しながら記事として組み立てていきます。リサーチにかかる工数は全体の70%、執筆にかかる工数は全体の30%ほどです。

リサーチの段階では、執筆に必要な情報を収集します。最初に行うのが、依頼主へのヒアリングです。どのような記事を作りたいのか、なぜその記事が必要なのか、その記事を誰に読んでもらいたいのか、など…。記事をつくるうえでの基礎情報を整理します。

続いて、ヒアリング内容にそって関連情報を多角的に収集します。主な収集方法としては、書籍やWebでのリサーチ、有識者へインタビューなどがあるでしょう。そして、集めた情報を整理・取捨選択しつつ、記事の方向性を決定します。

記事の方向性が決まったら、執筆の段階へと移行します。ただし、ここでもすぐには書き始めません。まずは記事構成、いわば記事の設計図を作成します。どのような論理を展開するか、どの情報をどの順番で書くか、どれくらいのボリュームで書くか、など…。文章を作成する段階で迷わないよう、この時点で記事の詳細なアウトラインを作成します。

ここまでの準備が整ったら、ようやく執筆のスタートです。記事構成に沿って一気に書き上げます。そして最後に推敲(見直し)を入念に行い、必要に応じて手直しを加え、記事の完成です。

案件のディレクション

原稿の作成以外の業務としては、案件のディレクション(進行管理)が挙げられます。基本的には編集者やディレクターが担当する業務ではありますが、近年では一部またはすべてをライターが兼任するケースが多いです。

代表的なディレクション業務としては、依頼主への提案・交渉、スケジュール管理、インタビューのセッティング、監修者の手配などが挙げられます。

記事をひとつ作るにしても、そこには多くの関係者がおり、それぞれが同じゴールに向かって作業をしています。ライターの仕事は個人プレーだと思われがちですが、他の仕事と同じく、多くのコミュニケーションを必要とします。

当然ながら、これらの業務をマルチにこなせるライターは重宝されますし、原稿執筆のみを担当する場合よりも報酬額は高くなります。

ライターに求められるスキル

必須のスキル

日本語文法の知識

読者に情報を正しく(齟齬なく)伝えるためには、日本語文法の知識が必要不可欠です。「そんなの知っていて当たり前でしょ」と思うかもしれませんが、なんとなくの理解で文章を書いている人のほうが多いと感じます。すべての文法を完璧にマスターする必要はありませんが、小学校で習う程度の知識は確実に押さえておきたいところです。

参考として、弊社メディアでは日本語文法に関する記事をいくつか公開しています。日本語文法について知りたい方は、こちらをご覧ください。

参考記事

コミュニケーション能力

先述のとおり、ライターの活動には多くのコミュニケーションが求められます。特にフリーライターの場合は、営業活動なども含め、各方面への細々としたコミュニケーションが多数発生することでしょう。他の業種と同じく、コミュニケーション能力は必須であると言えます。

基本的な部分で言えば、報告・連絡・相談、いわゆる「報連相」が挙げられます。また、依頼主や編集者の要望を正確に咀嚼するための理解力も必要ですし、彼らに対してアイデアを持ちかける際には提案力・プレゼン力なども求められます。

最低限のPCスキル

ライターとして活動するのであれば、最低限のPCスキルは身につけておきたいところ。昨今ではほぼすべての作業をPCで行いますので、スムーズに文字入力ができるレベルのタイピングスキルは必須でしょう。そして、関係者とのコミュニケーションには、主にメールやチャットが使われます。代表的なツール(Gmail、Slack、ChatWorkなど)はある程度使えるようにしておきましょう。

併せて、執筆作業においてはWord(もしくはGoogleドキュメント)を使うケースが多く、執筆に必要な資料はExcel(もしくはGoogleスプレッドシート)でまとめられるケースが多いです。どちらも使える状態が理想です。

あると重宝されるスキル

マーケティングスキル

記事制作による商業的な狙いを達成しやすくするためには、マーケティングに関する知識やスキルが求められます。例えば、リスティング広告やアフィリエイト広告などといったWeb広告に精通していれば、広告出稿などの展開を想定したうえで、企画考案や執筆ができるようになるでしょう。

また、SEO(検索エンジン最適化)に関するスキルも非常に重宝されます。検索エンジンに評価されやすい記事構成・レイアウトを熟知しているライターであれば、依頼主も積極的に依頼したくなることでしょう。

いずれにおいても、「何となく知っている」レベルではなく、施策を練り、それを実行できるレベルであることが求められます。SEOに関しては弊社メディアでも記事を公開していますので、より詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

参考記事

原稿編集スキル

原稿編集スキルは、「原稿を客観的にチェックする技術」とも言い換えられます。自身の原稿(もしくは他者の原稿)を読者の目線で見直し、ブラッシュアップしていくための技術です。

原稿編集スキルの例としては、校正・校閲が挙げられるでしょう。校正・校閲の定義について正確に説明すると長くなってしまうので割愛しますが…簡単に表現すると「文章の誤りを見つけること」です。文章の誤りの例としては、誤字脱字、誤変換、表記ゆれ、内容の矛盾、固有名詞の表記ミス、誤ったデータの記述などがあります。

他にも、文章をより読みやすくするための添削技術などが挙げられます。読者に情報を正しく(齟齬なく)伝えることは必須であり、さらには「分かりやすく伝える」という技術も非常に重要です。読みやすい文章の書き方、読者を引き込む文章の書き方など、ライティングにはさまざまなテクニックがあります。このあたりの技術を身につけていれば、ワンランク上の仕事を任せてもらえるでしょう。

文章添削については、弊社メディアの以下の記事で詳しく解説しています。ライティング未経験の方にとっても非常に役立つ情報ですので、気になる方はチェックしてみてください。

参考記事

ライターの給料・収入

最後に、ライターの給料・収入について見ていきましょう。フリーライター、会社員ライターの2パターンに分けて解説します。

参考情報として、国税庁が発表した「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、令和2年の日本の平均給与は433万円とのことでした。

フリーライターの場合

フリーライターの報酬体系は、文字単価(1文字○円)や記事単価(1記事○円)などの計算が一般的です。もちろん契約内容次第ですので、時給換算や月額での固定報酬というパターンもあるでしょう。

フリーライターの収入の目安については、働き方が千差万別であるため、一概には言いづらいです。参考情報として、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が発表した「フリーランス白書2019」の収入に関するデータを見てみましょう。

出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書 2019」

こちらの資料の「文筆系」の欄をご覧ください。最も割合が多いのが「年収200万円未満(32.0%)」であり、次に多いのが「年収200〜400万円未満」となっています。半数以上が年収400万円未満とのことで、令和2年の日本の平均給与(433万円)と比較した場合、収入はやや低めな印象です。

一方で、1,000万円以上の収入を得ている人も一定数いるようです。専門的なスキル、高い営業力、そして多くの案件をこなせるような熱意と体力があれば、高収入も期待できるでしょう。

会社員ライターの場合

会社員ライターの報酬体系は、基本的には固定給です。一般的な会社員と同様、給料という形で毎月同程度の賃金が支払われます。

収入の目安について見てみましょう。indeedに掲載されている求人情報には、年収300〜500万円ほどの募集が見受けられています。令和2年の日本の平均給与(433万円)と比較した場合、ほぼ同程度かやや少なめ、といったところでしょうか。

まとめ

それでは、当記事の冒頭で投げかけた問いを思い返してみましょう。ライターは本当に「自由で/誰でもできて/稼げる」仕事なのでしょうか。簡単に整理してみます。

Q.ライターは自由?

フリーライターの場合、一般的な会社員と比べれば自由度が高いのは間違いないでしょう。ただし「好き勝手にやれる」という意味ではないので、勘違いは禁物です。

Q.ライターは誰でもできる?

ライターを始める際、特殊な技能・資格は必要ないので、低難易度の案件であれば誰でもできると思います。もちろん、難易度が上がれば専門的な知識やスキルが必要になるでしょう。

Qライターは稼げる?

他の業種より稼ぎやすい、というわけではなさそうです。むしろ、他よりも収入はやや低めな傾向にあります。フリーランスとしての活動であれば努力次第ですので、夢はあると言えるでしょう。

ライターという働き方に興味をお持ちの方は、上記を踏まえつつ転職や独立などを検討していただければと思います。当記事が皆さまの今後のキャリア設計の参考になりましたら幸いです。

なお、当社ではライティング講座「あなたのライターキャリア講座」を運営しています。ご興味がございましたら、以下からアクセスしてみてください。

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執筆・編集協力:大町拓也

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伊藤謙三
横浜出身。青山学院大学経済学部卒業後、フリーランス活動を経て編集者・ディレクターとして株式会社YOSCAに入社。2020年に「あなたのライターキャリア講座」を立ち上げ、講座の運営・開発を担当している。ライター向けPodcast「フリーライターのよりどころラジオ」のMCも務める。趣味は音楽鑑賞、スケートボード、麻雀。